1章 ー08
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ど、どうしよう!
ネルの顔をもとも見れない!
「ティム、契約の内容について確認したいのですが」
誓いのキス以来俺はまともにネルの顔を見れないと言うのに、いつもの落ち着いた声で彼女は言う。
結婚式も終わり、後は寝るだけとなった俺らは並んでベッドに腰かけている。
初夜だからと準備されたであろう寝間着の上に彼女はしっかりとローブを着て、俺の横顔に視線をくれている。
正直言って、俺は女の人が苦手だ。
裏表があって怖い。
昔、近所で可愛いと評判の子が、陰口を叩いているのを聞いてしまって以来、どの子もそうなんじゃ……と、疑ってしまう。
だから、女性と一対一で会うとなると、目の前の人がただ笑顔という仮面を付けているように見え、逃げてしまう。
遂には会う前に逃げてしまい父にはこっぴどく叱られてしまった。
表裏という点において、ネルは殆どそんなものはないように思う。
綺麗だと言ったら『知りませんでしたの?』と、返すような人だから。それに付き合いも長い。
昔から男装の令嬢を見ると、普段は落ち着いているのに目を輝かせ、とても嬉しいそうに話し出す。
今もそれに変わりがないと知って微笑ましというか、なんと言うか……ちょっと嬉しい気持ちになった。
「うん、良いよ」
「書く物もお借りしても?」
「勿論。机に移動しようか」
その方が、俺も落ち着けるかも。
ベッドの上は落ち着かない。




