1章 ー07
ティムのご両親は良い人だわ。
でもやっぱり自分の生家が一番。
みんなこんな気持ちで嫁ぐのかしら?
「ネル!もう俺の準備は終わって……」
「ちょっと、ティム!今から式ですのに……」
ベールを手にしたメリッサもびっくりした顔で突然部屋を開けてやってきたティムを見た。
なにやってるのよ。
私が言うより早く
「綺麗だ……」
と、ティムが部屋の入り口でポロリと言葉を落とす。
「あら?知りませんでしたの?」
勢い良く新婦の控え室に入ってきて何を言っているの、この男は。
「知っていたけど、その……あまりにも綺麗だったから……」
あら、男の方が好きでも女性を褒めてくれるのね。
私は心のノートにメモをする。
「ティムも似合っていますわよ」
サテンの黒い生地に金や銀の糸で刺繍が施された上着を着ているティムはいつもより品が良くなって見える。
「殿下は来られますの?」
「来ないよ!」
あら、そんな着飾っているのに殿下に披露できないなんて残念ね。
「さ、参りましょう」
ベールも付けてもらった事ですし。
私は侍女達に一礼し、退室する。
ティムも彼女達に頭を下げ、小走りで隣に並ぶ。
「ティムは中で待つのではなかったの?」
「そうだった!」
なにをやっているの、本当に。
行く末が心配だわ。
そう思っていたけれど、存外、式の間はしっかりしていて、誓いの言葉は噛むことも間違える事もなかった。
ただ、誓いのキスはどうするのかしら?と、思っていると、真っ赤な顔で私の前髪をどかす事なく額にするのがちょっとだけ面白かった。




