最終章―06
「ティム」
「わー!!」
後ろからそっと抱きつくと、ティムはお化けにでも遭ったかのような奇声を上げた。
「ちょっ、ちょっと、ストップ!」
あら、まるで茹でダコだわ。
「ネル、それは良くない!」
「あら? どうして?」
「どうして?!」
そんなびっくりしなくても良いじゃない。
そう言われて私もびっくりよ。
「……ネル、君は女性だ」
え? 今更ね。
「そうね。男だった事はないわ」
「だったら……」
「だったら?」
「だから……」
「だからなんですの」
話の進まない男ね。
「今みたいに後ろから抱きつかれると、こう……胸が……」
「当たりますのね?」
「そう!」
ティムがうん、うんと頷く。
「……旅行の時に揉んだと……」
「あれは不可抗力だから!」
ティムは腕でバツを作った。
「今はそうじゃないから、ダメ!」
それは不可抗力ではないと言いたいのね?
「つまり、ティムは私に触れないと……」
男女のアレコレがない方が良いと思っていましたけど、男性の方からダメだと言われたら、案外ショックなものですわね。
「いや……触れて良いなら、それは……」
それは……?
じっと見つめていると、ティムの手が私の頬に触れる。
「どこまでなら、触れて……良いのかな?」
私はティムの手の甲を手を重ねた。
「どこまでって難しい質問ね。貴方が望むまで?」
ティムが言葉に一瞬詰まり、大きく息を吐いた。
「言質取ったから」
あら、ティムにしては難しい言葉を知っているのね。
彼を茶化したい気持ちもあったのに、ティムが触れていた手を後頭部に回し、私を見つめるからなにも言えなくなってしまった。
近づく彼の顔に、私は目を閉じたのだった。




