最終章―03
「王族で、顔が整っているだけでなく、剣の腕も良く、聡明な方よ。貴女以外は皆、殿下の虜よ」
そこまで言うなんて……まぁ、確かに、気さくで心配りの細かい人だから人気なのは分かるわ。
「貴女も興味ないふりしているのかと思ってましたわ」
私の場合、アラン様にしか興味ありませんでしたものね。
「噂には全くなってませんでしたけど、幼馴染みの騎士様と恋仲でしたから、殿下に目が向かなかったのね」
ベアトリスは、うふふと笑っている。
「でも、変ですわね。噂ではアラン様に夢中との事でしたけれど……」
知ってるんじゃない。
「……ベアトリス様は噂が事実か知りたいのですか?」
私を邸宅に招いてまで。
「そうね。知っていないと、気になる性質ですの」
その言葉通りなのか、ベアトリスは裏の無さそうな笑みを浮かべている。
「噂は事実です。ティムとは利害の一致にて、結婚しました。ですが、今は想い合っていますので、ご心配なく」
想い合っている事に嘘はないわ。
……でも、本当に、特別な友人ってなんですの?
思い出したら、イライラしてきたわ。
「……よく皆さんが、ネルさんは澄ましていると言ってますが、あまり感情が顔に出ないだけではないのかしら?騎士様には、困らせるくらいの方がよろしいと思いますわ」
カップからベアトリスに目を移すと、彼女はにっこりと笑った。
「一番、殿下との結婚が噂されていたので、あまりお話した事はありませんでしたけど、ネルさんって、意外と普通なんですわね」
普通……。
「そうですわ。特別、変わった人でございません」
「そうね。ふふっ、でも面白い方ね。またお喋りしましょうね」
「えぇ、喜んで」
殿下に恋しているからライバルだと思って私に嫌な態度だったのね。
私だったらそんな事はしないけど、彼女の気持ちが分からないでもないわ。
ホットチョコレートを一口飲んで彼女を見る。
目が合った彼女はにっこり笑った。
きっと、ベアトリスは愚かな人ではないわ。
ファンキンスでは殿下とは釣り合わない。
けれども、いつか……だなんて、そんな夢を捨てきれず未だに結婚していない人なのね。
それほど殿下が好きだと言うとこに関して、ある種尊敬の念を覚えるわ。
いつか見ることになりそうな悲しい未来に、そっと私は目を伏せた。




