最終章―01
『久しぶりに劇、観に行って良いからね』
スッキリとした顔でティムはそう言うと今日もお勤めに行った。
なんでしょうね、この温度差……。
もうティムは"特別な友人"っという位置付けで満足!と言う感じなのかしら。
何故だか、フラれた気分ですわ。
「はぁ……」
でも、折角なので、久しぶりに観劇に行きましょうか。
メリッサを呼んで支度する。
彼女は観劇の際、後ろの人の邪魔にならないよう髪をサイドで三つ編みにしてくれた。
この髪型……旅行の夜と同じだわ。
あの時、ティムは私の手をどかして胸を確認していた。
……殿下の事が好きじゃないんですものね。
普通に興味あってもおかしくないじゃない!
それにしても意外だったわ。
ティムが手をどけるなんて……意外にも狼なんですわ、きっと。
知らないティムを知り、少しドキドキした。
◇
今回アラン様が演じるのは、騎士団副隊長であり、国の第三王子役。
恋した男爵令嬢に、熱烈に自分の想いを伝えるシーンにはドキドキしましたわ。
ティムも一応、騎士ではあるわよね……アラン様のように、手を握りしめ、熱ぽく愛を語られたら……。
はっ、嫌だわ、私ったら何を想像しているのよ!
「あら、昨日ぶりね」
劇の余韻に浸っていると、取り巻きを伴ったベアトリスに声をかけられた。
「皆さん、ご機嫌麗しいご様子ですわね」
私は赤くなった頬を隠す為に扇子を広げる。
ベアトリスの取り巻きは大体いつも同じで、年下の男爵令嬢。
ベアトリスのお父様は外交関係に携わっているから、何か得でもあるのでしょうね。
私と性格が合わないから、あまり損得なしで友達だなんて思えない。
「昨日はお話の途中に失礼しました」
礼儀として、やはり謝った方が良いわよね。
「いいえ。少しお時間頂けませんこと?」
ベアトリスは珍しく嫌味たらしい笑顔ではないのね。
私は何も話なんてないけれど、笑顔で了解を唱える。
「貴女達は帰ってよろしくてよ」
ベアトリスの言葉に取り巻きが私を睨んでいった。
私じゃなくて、ベアトリスを睨んで欲しいものだわ。




