7章―02
◇
「よぉ」
店にはいると馴れ馴れしく彼が片手を上げた。
この軽率さ、積極的に関わりたくはないわね。
「お久しぶりです、ミゲルさん。あのソファは、とつも居心地が良いですわ」
「そりゃまぁ、俺が作ったからな。従者が下がったあたりをみるとティム坊と何かあったのか?」
鋭いわね。
ミゲルさんが指摘した通り、私達を二人にする為にメリッサ達は店から出ていった。
「実は師匠に相談がございまして……」
「なんの師匠だよ」
くくくっとミゲルさんは低く笑う。
「その、恋愛関係の……」
「へ~ティム坊がそう言ったのか?」
「なり得ると」
「そりゃどうも過大評価だねぇ。んで、どんな相談だよ?」
「実は…………」
私は下らない詮索をされないよう、正直に今までの事をミゲルさんに話した。
「……ネル嬢は見かけによらず、バカなのな」
失礼ね。
話を終えて暫く黙っていたと思ったら、開口一番そのセリフはないんじゃないのかしら?
「なんで、両想いの相手にそう切り返す?もっと……」
「今、なんて?」
「バカなのな」
「そこを繰り返す事に悪意を感じますわ」
「ははは。ネル嬢はティム坊が好きなんだろ?だからさっき、そのキャロットとティム坊がお似合いなのを、そんな切なそうに説明したんじゃねぇのか?」
キャロットではないわね。
でも、私がティムを……。
「自覚無かったのかも知れないが、物凄く悲しそうな顔で、二人がお似合いだと言ってたぜ」
ティムとの時間は確かに居心地は良いけれど、好きだなんて事は……。
「ネル嬢がスッキリしない理由はティム坊と目が合わないからなんだろ?どうでも良い奴と目が合わなくったってどうって事ないだろ」
「……ティムは契約者ですわ」
「あーはい、はい。じゃその契約者様がよ、他に好きな女が出来て、別れようって言ったら契約を快く解除するんだな?」
「勿論じゃない」
契約時に失念してたけど、そうなった場合、私がティムを縛る理由なんて何もないもの。
「はぁ……こんな顔してるのに?」
ミゲルさんが掲げた曇った手鏡に写ったのは、眉をハの字にした不服そうな悲しそうな顔をした私だった。




