6章―09
だけど、ネルは麗人好きで、俺に勝ち星なんて、なさそうだった。
だから、ランスロー卿に最近のネルの事を聞いたんだ。
そしたら、神の采配だったのか、ネルは婚約が決まるまで、観劇禁止令が出ていた。
それを持ち上げて断られたらもうどうしようもないと思ったんだけど……まさか、殿下を好きだと勘違いして、結婚を承諾してくれただなんて……。
「じゃあ、ネルは殿下が好きで、殿下に近づく為に俺と結婚した訳じゃないんだね?」
「そんな筈ないじゃない。確かに殿下は見目麗しいけれど、身分差がありすぎますわ」
「だから、こう……叶わない恋だけど、近くで見ることが出来るなら……的な」
「あら、意外と乙女なのね」
え?! 乙女?!
「それじゃあ、アントニオさんが好きだけど、既婚者だから、諦める為に俺と結婚を……?」
「そんな筈ないじゃない。今は紳士ぶってるけど、昔はやんちゃだったと噂のある人よ」
へ~、そんなんだぁ。
なんか意外。やんちゃなアントニオさんとか想像出来ない。
「……だったらどうして、結婚してくれたの?」
「……だから、殿下のことが好きだと勘違いしたからですわ」
その意味が分からない。
"俺が殿下の事を好きだから結婚した"
……勘違いするのもおかしいけど、それで結婚するのもおかしくない?!
「もしかして、男として俺が安全だと認識したって事?」
ネルは気まずそうに窓の外に目をやる。
「……それもあるわね」
つまり、それって……殿下が好きなら自分を好きにならないだろうって思ったって事だよね?
「でも……」
「ちょっとごめん、考えさせて」
俺はネルが好きだと自覚したばかりなのに、男として全く見られいないと……。
なんだかなぁ。
傷ついてないだなんて、嘘でも言えない感じ。
こんな時、同じ邸の、同じ部屋なのって辛いね。
これにて、6章もおしまい。
あと2章+エピローグでネルのお話は終わります。
中々ネルの恋は難しい様子ですね。




