6章―01
「お嬢様、今日はどのような髪型にされますか?」
「そうね……メリッサにお任せするわ」
「かしこまりました」
そう言ってメリッサが髪をすく。
ふわふわの髪も、クリッとした目も持たない私は、本当に可愛いと言う言葉など似合わず、彼女の容姿を思い浮かべると、溜め息が出そうになる。
頬にキスね……。
私が思っている以上に二人は親しいのかしら。
想像したくないのに、想像力が豊か過ぎる為か、二人が見つめ合っているのを想像してしまう。
私は、ティムの想い人が殿下だと思ったから結婚しても良いと思ったのであって、彼女がティムの想い人なら結婚なんてしなかったわ。
「お嬢様?どうされたんですか?」
「いいえ、ちょっと……目にホコリでも入ったみたですわ」
こんな事なら、相手の好きな人が分かったら、離縁しても良いって契約書に書いておくんだった。
コンッコンッ
「ネル、支度終わった?」
「えぇ」
ティムが少しだけ顔を出す。
「午後から予定ある?」
「いいえ」
気まずそうな顔をして、お出かけのお誘い……?
「そっか……。あのさ……」
二人だけでお出かけとか……?
ティムの頬が少し赤いからか、私までドキドキするじゃない。
「殿下からネルと三人で出かけようって手紙が、朝一で来たからそのまま予定空けといてね」
え? 殿下と?
「あと、動きやすい格好でって書いてあるからね」
それだけ言うと、ティムは走って行ってしまった。
……これは、どこに驚け良いの……?
殿下と三人で出かける点なのか、期待させるような言い方をした点なのか、もう分からない。
「……殿下とはミーズロー第一王子殿下でございますか?」
「そうね」
そう言った途端「お嬢様、ドレスを脱いで下さいませ!」と、エンジンのかかったメリッサが大慌てで準備に取りかかる。
昨日といい、今日といい、メリッサは生き生きと準備してるわ。
メリッサにとって、侍女の仕事は天職なのかもしれないわね。




