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5章―13
「おっと、失言だったな。ネル嬢もすまなかった。許してくれるか?」
え?殿下?
殿下が膝をついて許しを乞うのを初めて見る。
「殿下!怒ってなどいませんわ。お立ちになられて下さい」
「優しいのだな」
あー!
手袋の上からだけど、殿下が、殿下が……
「一応、俺の妻なので、ちょっと……」
「許してくれた事に対するお礼のキスであり、他意はない」
本当ですか?!もの凄く良い笑顔ですけど!
「さ、まだ公務も残っているし、そろそろ仕事でもするかな。ネル嬢は城の見学をしてくれて構わない。そこの騎士はここをよく知っているだろうから」
そりゃ知ってるけど……でも、確かにネルは城に来ることはあまりないもんなぁ。
「ネ……」
ネルに声を掛けようと思ったけど、後は言葉にならなかった。
だって、ネルは殿下がキスした手の甲を見ていたから。
……やっぱり、ネルは殿下が……。
嫌だな。
俺じゃない誰かが好きなのだと分かっているけど、殿下やアントニオさんが相手なのは、嫌だな。
だったら誰なら良いんだろ……。
油ものを食べすぎたようや不快感に、俺は奥歯を噛み締めた。




