1章 ー05
「これが原因かしら」
私は自分の胸を見下ろした。
手首が細く、鎖骨が浮き出ているのに対して、胸と腹部の肉が多い。
腹部の肉はコルセットの締め付けにより目立たないので、胸が目立ってしまう。
この豊満な胸のせいで下賎な問題外の輩からの求婚がやたらと多かった。
胸に話しかけてくる男との結婚なんて嫌よと、悲劇のヒロインのようにお父様に訴えると結婚を急かされる事が減ったわ。
悪いばかりではなかったわね。
「いや、決してそう言う訳じゃ……」
ティムは私の視線を辿り、あからさまに他へと視線を向ける。
男色家のティムにしたら興味のあるものではないでしょうしね。
むしろ殿下のような鍛え上げられた胸筋にときめくのかしら?
色々と興味がありますわ。
私は好きなだけアラン様を愛でられるし、この契約結婚、私的に良い条件ですわね!
「ティム、その契約結婚というものを謹んでお受け致しますわ」
これでまた好きなだけ観劇に行けるわ!
「本当!?わぁあ、有り難う!ネルに頼んで良かった」
ティムの心の底から安堵した笑み。
少し可愛く感じるその笑みだけ見ると、令嬢を選び放題でしょうけど、男の方が好きですものね。
男性とお付き合いした事のない私としたら、男女のあれこれもなさそうですから最高ですわ!
「よし、そうと決まればランスロー男爵に挨拶に行かねば…!」
やる気に満ち溢れたティムが椅子から立ち上がる。
「その前にライガー卿に話を通しなさいよ」
「あっ、うん。そうだな!よし、俺は家に戻るとする。それじゃネル、またな」
爽やかな笑みでティムは去っていった。
……本当に、女性に興味がありませんのね。
普通、こんな麗しい乙女を置き去りにします?
まぁ、別に良いですけれど。
これからもこうやってお互い干渉することなく過ごすのはとても自由で楽でしょうから。
私は窓から差し込む春の暖かい日差しに目を細めた。




