5章―07
「ランスロー男爵が長女・ネルを妻に迎え入れました。ネルは自分には勿体ない女性でして、殿下にも紹介したく……」
「おい、おい。未婚の俺に惚気話するために来たのか?ティムも言うようになったもんだな」
「えっ?!いえ、滅相もない。素敵さを知ってもらえたら充分です」
充分過ぎるでしょ!?
「ネル嬢も顔を上げると良い。こんな阿呆が夫で苦労してないか?」
「……ご想像にお任せ致しますわ」
返答に困るわね。
「えぇ?!そんなっ!俺、ネルに苦労かけてる?」
出たわね、シュン顔。
その顔、殿下の前でもするのね、本当、びっくりな人だわ。
「因みに俺は、こんな阿呆はティムしか知らん」
「殿下、ちょっと!」
「ん?なんだ?俺は、事実を述べたまでだが」
……殿下とティムがじゃれてますわ!
ど、どうしましょう!?
見ていて良いのかしら、これ……。
ティムより少し背の高い殿下が、子犬のようなティムをあしらっている。
この光景よ!私がずっと、見たかったのは!!
「ところでネル嬢よ、礼を言う」
何のかしら?お礼を言いたいのは私の方ですけれど。
「先程、お土産を納めた。父と母にお揃いの赤珊瑚とは中々良いセンスだな。絶対にティムが選んだのではないと、すぐに分かった」
「俺かも知れないじゃないですかー」
あら、ティムったら小さな声で抗議してるわ。
「お前、珊瑚が何か分かっているのか?」
「それくらい分かってますよ!」
ティムがキャン、キャン吠えてるわ。
「そうか。あれが植物なのか動物なのか分かっているのか」
「え?なんて??」
二人はいつもこんな感じなのかしら……ずっと見ていられるわ。




