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5章―06
重厚な扉の前に立つ護衛兵は、ティムを見てわずかに頷き、音もなく扉が開く。
客間だと案内された部屋は、さきほどの回廊の冷たさとは対照的に、柔らかな絨毯と蜜蝋の香りに包まれていた。
ティムの背中を追って一歩踏み出すと、足元の音は大理石の硬い響きから、厚い織物の吸い込まれるような感触へと変わった。
「……君が噂の奥方か。成る程。彼らが騒ぐだけの事はあるな」
声の方へと目線を上げる。
王族特有の黒髪を長く伸ばし、束ねた王子殿下は窓辺に寄りかかるようにして、私に視線を向けていた。
切れ長のバイオレットの瞳に、薄い唇。端正な顔の殿下はまさに"冷静沈着"と言う言葉が似合っている。
その殿下の足元にティムは跪いていた。
私もゆっくりと淑女の礼をとる。
「堅苦しいのはいい。俺に妻を紹介してくれるんだろ?」
親しい殿下の声に、ティムは立ち上がって一礼すると、私の隣に立った。




