5章―03
ティムが軽く私を紹介し、中へ。
この高くそびえる城壁を見上げた事は何度もあったけど、中に入るのは初めて。
さっきまで見えていた無機質な城壁とはうってかわって、出迎えてくれるのは色とりどりの花。
中央には噴水が上がり、きらめく水しぶきの向こうから声がした。
「ネル、こっち」
向かって右の回廊でティムが手招きしている。
もう少し見ていたい気もするのだけど。
花を眺めなからパティオを過ぎ、日陰の回廊に入る。
当たり前だけど、今までで一番高い回廊ね。
コツ、コツと、靴の底のコルクの音がとても響く。
パティオを制服を着た女性が忙しそうに横切ったのが視界に入った。
見え覚えのある顔ね。あわよくば殿下に気に入られようと、色んな家の令嬢がここで働いているって聞いていたけど、本当なのだわ。
「ネルはここで待ってて」
そう言ってティムは奥へと入って行った。
もう置いて行かないと言っていましたのに。
まぁ、今回は無理な話でしょうね。
私はただの男爵令嬢でしかないもの。
ふぅと、息を吐き、心を静める。
目に入った床の大理石はさすが王城ね。
白の地色に緑の模様が端々に入っており、こんな大理石をお目にかかることなんて中々ないことだわ。
コツ、コツと、滑らかな質感を靴で確認していると、背中に視線を感じた。
ここからだと少し眩しい噴水を見ると、あまり嬉しくない顔があった。




