5章―04
「あらぁ、やっぱりネルさんじゃない。ごきげんよう。そう言えば、幼馴染みの騎士様とご結婚されたんですってね」
漆黒のベルベットに身を包んでいる彼女に、私は淑女の礼をとる。
「ごきげんよう、ベアトリス様」
ファンキス子爵の娘・ベアトリスは私と同じ歳なのだけど、何かにつけて突っかかってくる。
「ふふっ」
扇子で口元を隠したって、その嫌味な雰囲気は消えなくてよ?
「ネルさん、今日はどうされたの?まさか、ここに一人で来たわけではないわよね」
「えぇ。夫と来ましたわ。ベアトリス様はどうして王城に?」
本当はどうでも良いけど、聞くのが礼儀よね。
「お父様が国王陛下と謁見中ですので、ここで待ってますの」
殿下の目に止まりたくて、付いて来ているのかしら?
いつも派手だけど、今日は一段と派手だわ。
「私は何度も来ていますが、ネルさんは初めて?さっき物珍しそうに床を見ていましたけれど」
ベアトリスの後ろに控えている彼女の侍女がクスクスと笑っている。
主人に品がないから、侍女の品の無さも流石よね。
「初めてですわ。この緑色の入り具合はとても美しいので、つい見とれていましたの」
足元の大理石を靴でなぞる。
「そうなのね」
ベアトリスはきゅっと顔の中央に力を入れている。
ふふっ、そんな幼稚な挑発じみた言葉に躍起になる筈ないじゃない。
何度も同じような事をしているのに懲りない人ね。




