5章―02
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「行こうか」
「そうね」
苦い顔をしているティムに私も渋々返事をする。
どうしてお土産を、妻と渡しに行くだなんて殿下に言ったのかしら。
しかも当日に妻、つまり、私にその事を言うだなんて……。
「ネル、緊張してる?」
緊張より怒りの感情の方が強いわね。
「そうね。もう少し早くに仰って頂ければ、心の準備も出来ましたのに」
「うん、ごめんね。ネルをびっくりさせようと思って」
「えぇ。朝からティムの大声で起こされてびっくりしましたわ」
ティムがシュンと肩を縮める。
前から思っていたのだけど、ティム以上にこの"シュン"が間に合う男性っているのかしら?
ちょっとわざとしょげさせたい気持ちなるわね。
動く馬車の中でしょげているティム。
暫くこのままにしておきましょう。
都市から王城へと続く細い石畳の道を通り、正面の城壁に着いた。護衛の兵士が立っているのが窓から見える。
ティムは先に降りて、挨拶している。
先ほどの顔の面影はなく、ハキハキと話しているみたい。
同じ隊員だものね。顔だって知っているのでしょう。
「ネル、降りて貰っても……?」
しょげ顔に戻って上目遣いで私を見る。
「えぇ構いませんわ」
むしろ、ずっと馬車にいる訳にもいかないでしょう。




