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ネル嬢のおいしい契約結婚  作者: 間波 結衣実


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5章―02

 ◇


「行こうか」


「そうね」


 苦い顔をしているティムに私も渋々返事をする。


 どうしてお土産を、妻と渡しに行くだなんて殿下に言ったのかしら。


 しかも当日に妻、つまり、私にその事を言うだなんて……。


「ネル、緊張してる?」


 緊張より怒りの感情の方が強いわね。


「そうね。もう少し早くに仰って頂ければ、心の準備も出来ましたのに」


「うん、ごめんね。ネルをびっくりさせようと思って」


「えぇ。朝からティムの大声で起こされてびっくりしましたわ」


 ティムがシュンと肩を縮める。


 前から思っていたのだけど、ティム以上にこの"シュン"が間に合う男性っているのかしら?


 ちょっとわざとしょげさせたい気持ちなるわね。


 動く馬車の中でしょげているティム。


 暫くこのままにしておきましょう。


 都市から王城へと続く細い石畳の道を通り、正面の城壁に着いた。護衛の兵士が立っているのが窓から見える。


 ティムは先に降りて、挨拶している。


 先ほどの顔の面影はなく、ハキハキと話しているみたい。


 同じ隊員だものね。顔だって知っているのでしょう。


「ネル、降りて貰っても……?」


 しょげ顔に戻って上目遣いで私を見る。


「えぇ構いませんわ」


 むしろ、ずっと馬車にいる訳にもいかないでしょう。

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