4章―10
◇
「どうして先に別荘に戻ったんですの?」
メリッサが馬を走らせて、ティムの事を知らせてくれた時は本当にびっくりしましたわ。
「ごめんね。キャロラインちゃんを送ってきたから……」
「……そうなんですの」
妻を放置して、若い女の子を送って来たと聞くと、良い気がしないものね。
「帰る準備は終わってますの?」
「うん」
……その割には元気がないのね。
「……」
こんな時、何とか言えば良いのかしら?
コンッコンッ
「どうぞ」
「失礼します。今日も泊まられますか?」
メリッサが耳打ちする。
もう一泊できる準備をしていたのを思い出す。
「いいえ。もう帰る準備は出来ましたわ。ティム、帰りましょう」
「うん、帰ろうか」
アントニオとメリッサが荷物を運び、私達は馬車へと乗り込んだ。
「……」
ティムは静かに目を閉じ、窓枠に体を預けている。
ティムが静かだと、空気が重いように感じるわね。
別荘の緻密な幾何学模様の描かれた壁が見えなくなるのを見送った。
着いた時、ティムははしゃいでいたのが、嘘みたい。
寝ているのか、ティムはとても静かで身動き一つしない。
よく笑う口元がへの字になっているような気がする。
置いていかれたのは私なのに……何故かしら?
ふと不意にティムは瞼を開く。
ずっと見つめていた為、自然と目が合った。
「ネルとはさ……その……」




