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4章―05
行きすぎた態度に、男の手を扇子で叩こうと振り向くと、息を乱したティムが男に近付づき、その手を優しくどけた。
「触らないでもらえますか。俺の妻に」
ティムはそのまま私を背中に隠す。
初めて会った時はあまり変わらなかった筈なのに、今では十センチ以上もティムの方が背が高い。
ティムの背中はいつからこんなに逞しくなったのかしら?
まじまじとティムの背中を見るのは初めてだわ。
お父様より肩幅が広いかも知れないわね。
「なんだよ。ちょーっと掴んだだけじゃねぇか。あーあ、酒が不味くなっちまう」
男が文句を言っているのが聞こえたけど、少しすると静かになり、ティムが振り返る。
「……大丈夫だった?」
「ティムが置いて行くからですわ」
「ごめん」
項垂れるティムを見るとちょっと罪悪感が……。
「……でも、助かりましたわ」
「うん!良かった」
本当にティムは素直ね。
「……」
「え?」
「……はぐれないようにですわ」
ティムのブールポワソを掴んでいる手に少し力を入れる。
「あ、あの……あっちにフライが売ってたけど、食べる?」
「えぇ」
はぐれない為に、自ら服を掴んだ筈ですのに、恥ずかしですわね。
心なしか周りの人見られている気もしますわ。




