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ネル嬢のおいしい契約結婚  作者: 間波 結衣実


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4章―04


 ◇


「朝は散々でしたわ」


 別荘から港の市場までの道中、馬車の中でティムに愚痴を溢す。


「ネルが階段を駆け足で下りたりするから」


 貴方に原因があったと思うのだけど。


 能天気なティムに小言を言おうとした時、馬車が止まった。


 いつの間にか防風林を抜け、市場の入り口に到着したらしい。


 ティムが先に下り、手を借りて馬車を下りる。


 風に運ばれ海の匂いがする。


 すぅっと肺の奥までその空気を吸い込む。


 海の匂いは嫌いじゃないわ。


「屋台を見に行こうよ!」


 ティムが目を輝かせて屋台が並ぶ方を指す。


「そうね」


 折角のお出掛けですもの、機嫌を悪くしていても面白くないわよね。


「ふぅ」


 目をつむり、軽く息を吐いて気持ちを切り替える。


 ……もういませんわね。


 人を置いて行くのが好きな人だとは知っていましたけど、こんな人の多い人所でも置いて行くだなんて……。 


「誰かと待ち合わせかい?綺麗なお嬢ちゃん。来るまでおじさんの船で採れた魚でも食べないかい?」


 酔っているようね。


 近付いてきた男と距離を取る。


「澄ました顔と態度が良く似合ってて、おじさん困っちゃうなぁ」


 なんなの、この人。一生困っていれば良いわ。


 無視して背を向けようとしたら「釣れないなぁ」と、肩を捕まれた。

 

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