3章 ー08
「別荘はこの林を抜けた先にありますわ」
窓から見える木々の合間から、くすんだ白い建物が見える。
「わぁ!雰囲気あるね」
林を抜けるとムデハル様式の建物が姿を現した。
「元はお母様の生家の別荘だったのを、譲って貰ったそうですわ」
お母様はとてもここを気に入っており、幼い頃は一年に何度もここに泊まった。
「建物の後ろは木が多いですが、目の前は開けていますから、そこで馬を走らせましょう」
私がそう言うと、止まった馬車からティムが降り、彼の手を借りて私も馬車から降りた。
入り口には門番が立っており、アントニオは彼にお金を渡す。
彼は嬉しそうにこの場を離れて行った。
「暗くなったらまた来てくださいます。知った者達だけの方が気が楽でしょう」
アントニオがニッコリと笑った。
「それに護衛は騎士であられるティム様がいれば充分でしょうし」
ね?と、アントニオはティムに笑みを向けた。
「お任せ下さい!」
何故かしら、ティムがはきはきとそう答えても安心感が得られないわね。
「では荷物を運び入れましょうか?」
アントニオがメリッサに言うと、彼女は「そうですね」と、両手に荷物を持った。
アントニオは持ってきた鍵で解錠している。
「鍵がありますのに、門番がいますのね。こんな人がいないところの警備なんて退屈過ぎて大変でしょうね」
「それもそうですね。ですが、彼らはこの仕事で生活しているので、なんとも言えません」
アントニオが扉を開くと、メリッサは荷物を運び始めた。




