3章 ー07
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ティムにだって親しい女性の一人や二人いてもおかしくはないのに、変に勘ぐって、しかも裏切られたような心境になるだなんて変よね。
小さくなっていった生家は遂に見えなくなってしまった。
窓から目を離すと、ティムは外を眺めている。
ティムの方からは何が見えるのかしら?
笑顔の多いティムのこうやって思慮に耽っているような顔を見るのは初めてだわ。
「……」
昔から付き合いがあるのに、知らない事って結構あるのね。
「何を考えてますの?」
「騎馬まで様になってるなぁって……あ、いや、ランスロー男爵の執事はうちと違って若いんだね」
前半に本音が零れてますわよ。
「お父様はアントニオは若くて優秀だと言っていたわ」
「若くて優秀……」
「えぇ。だから彼も大変よね。昨年、子供が産まれたばかりだと言うのに、色んな所に駆り出されて」
嫁ぐ私に付いてきたメリッサ以外の侍女は、この外泊の間アントニオと入れ替える形をとり、彼女達は休暇に入っている。
「え?子供いるんだ」
「いらっしゃるわよ。アントニオに似て可愛い女の子が」
「そっかぁ。そうかぁ」
どうして急にそんなにもご機嫌なんですの?
「ネル、結構な林だね」
元気になったティムがはしゃいだ声でそう言う。
私としては脇道に反れたこの小道が悪路なせいでお尻が痛く、とてもはしゃげる状態ではないわね。




