3章 ー06
アントニオさんはうちのセバスとは違ってお爺さんではなく、まだ三十代の若い男の人で、背が高くネルの隣に立っても見劣りしない。
「お帰りなさいませお嬢様。元気でしたか?」
「えぇ。皆さんに親切にしてもらってますから。ねぇ、メリッサ」
「皆さん、お優しくていらっしゃいます」
メリッサさんがニッコリと微笑むと、アントニオさんが「それは宜しかったですね」と、目元を優しくて細めた。
「ティム様、旦那様が中でお待ちです」
その笑顔のまま先頭となって案内されるが、なんでだろう……ちょっと嬉しくない。
「あら、アントニオが付いてくるの?それは心強いわね」
ネルの嬉しそうな声に振り向くと、侍女と話をしている彼女と目があった。
「アントニオが別荘で手料理を振る舞ってくれるそうよ」
「そこまでは申していませんが 」
苦笑いを浮かべてアントニオさんも振り返る。
「私が、アントニオの作る白いんげん豆の煮込み料理を好きなのを知っていますのに?」
ニンマリとネルが笑みを浮かべると「豚の腸詰めを用意します」と、アントニオさんは仕方ないなぁみたいな感じで返事をしている。
当たり前だけど、俺にはないネルと彼らの絆みたいな物を感じて、少し気持ちが沈む。
はっ!いけない。これじゃただの心の狭い男じゃないか!
「俺も楽しみです」
笑顔を向ける。
「ティム様まで……このアントニオ、心して作らせて頂きます」
アントニオさんは恭しく頭を下げた。
この後、ライガー男爵と話をし、メリッサさんとアントニオさんを伴って邸を立った。
連れて行く馬が増えるのも……と、うちの馬をアントニオさんに貸してあげたんだけど、騎馬姿も似合っていて、ちょっとへこむ。




