3章 ー05
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朝食後、荷物をまとめて邸を出発した。
ランスロー男爵の別荘をお借りするので、ネルの生家に寄る事になったんだけど、なんだか彼女の様子がいつもと違う気がする。
「ねぇ、ネル、具合悪い?」
「いいえ」
彼女は微笑んでいるけど、いつもより覇気がないと言うか……よそよそしいと言うか……う~ん?
こうやってネルと馬車に乗るのが初めてで、そんな風に見えるだけなのかな?
正面に座っている彼女は、顔を横に向け、外を眺めている。
ネルの瞳は珍しくって、緑に少し青を足したような色をしている。
俺はネル以外にこんな綺麗な瞳の色をした人を見たことはない。
「もうすぐ着きますわね」
彼女はニッコリと笑った。
漸くこちらを向いたのに、やっぱりいつもと違う感じがする。
「そうだね」
窓の外を見ると、ランスロー邸のうちより年季のある石造りが目に入る。
門を過ぎると馬車は止まり、扉が開いた。
使用人が数名出迎えてくれた。
「ようこそお越しくださいました」
その中でもセバスみたいな服を着た若い男の人が頭を下げて挨拶する。
「久しぶりね。アントニオ」
馬車からネルが顔を出した。
さっきまでと違って元気そうな気が……。
手を貸すとネルは馬車を降りて、そいつの前で足を止めた。




