2章 ー04
「ネルさんも遠慮しないでね」
「有り難うございます」
カップを持つと、カップからカモミールの香りが立ち上り、鼻腔をくすぐる。
「良い香りですね」
「うふふ、有り難う」
お義母様は嬉しそうにそれを口に運ぶ。
私も頂きましょう。
「ネルさんは本当に綺麗な髪ね。貴女達の子供はネルさんに似ると嬉しいわ」
……笑顔ですけど、それは無理なのでは?
ティムは殿下が好きですのよ?
女の私に一ミリも興味があるとは思えない。
あったらあんなに早く寝付けないでしょ。
「それはどうでしょうか 」
どう返答すべきか分からず、曖昧に言葉を濁す。
「そうよね。それにしても貴女達が思い合っていただなんて知らなかったわ。あの子は筆まめでもないし、内緒で会っていた事にも全く気づかなかったのよ」
私ったら鈍いのねぇと、笑っているけど、鈍いもなにも、あの時以前に一度たりともティムに会っていないわ。
「昔から家族ぐるみでお付き合いさせて貰っていたので、私達の事が表に出ると、変に期待させるのではないかと思いまして……」
カップをソーサーに置き、別れた時に今の関係にヒビが入るのも嫌ですし……と、悲しんだ顔をして見せると「まあ!」と、お義母は口元を押さえた。
「懸命に隠していたのね」
頑張った子供を見るかのような優しい目でそう言われますと、少し良心が痛みますわ。
この事は絶対にバレないようティムに釘を刺しておかないといけませんわね。
お義母様のたわいもないお喋りに相づちを打ちながら、頭の中のやる事リストにそう書き込んだ。




