宇宙船の中の人々
突然、開けた空間へと出た。そこは巨大な倉庫のようで、はるか高い場所にあると思われる天井からは、薄ぼんやりとした光が照らされている。
天井の高さに圧倒されていたヒネは、発光するような青い光を感じて、視線を自分の周辺へ落とす。辺りには何千・何万とあろうか、無数の大きな筒のようなものが整然と並べられているのが目に入った。円筒形の容れ物の中には灯りが取り付けられているのか、一つ一つが薄青く発光しているように見える。
すぐ近くにある、硬く透明な素材で覆われた容れ物の一つに目を移したヒネは、逆さまになった漆黒の瞳と目が合ってぎょっとした。
円筒形の容れ物に収められているのは、ヨヲセが話していたとおり“ヒト”だった。
ヒネと目が合ったのは女性で、浅黒い肌に彫りの深い顔をしている。女性は頬をかくような仕草をしたかと思うと、ぼんやりと視線を上に向けたあと、また目を閉じてしまった。身じろぎをしたせいで女性の長い髪の一部がゆらゆらと上昇していく。どうやら筒の中は液体で満たされているようだ。髪の毛の流れを追うように、ヒネも視線を上げる。
その先では、いくつかの黒く太い管が数本、筒の外で延びている。複数の筒から出た同じものがその先で束ねられ、どこかへつながれているようだ。改めて見渡せば、どの筒の中にも人があり、たいていは頭を下にして体を丸めた状態で液体に浮いていた。
ヨヲセが話していた通りの光景である。筒内の“人らしき者”たちは衣を一切身に着けておらず、目を閉じて寝ているように見える。見渡せば、男性も女性もいて、さらには子どもから大人まで年齢もさまざまなようだ。しかしそれだけではない、筒は、いくつかに区分けされているようであった。
肌の色が白い者たちや黒い者たちといった区分から、顔の凹凸がはっきりしている者、逆に凹凸がほとんどないのっぺりとした顔の者たちといった区分もあるようだ。また髪の毛の色も、パムゥ人のように黒い者、あるいは金に近い淡黄色の者、縮れていたりまっすぐに伸びている者と、こちらも多種多様である。
これだけ多くの“ヒト”を囲っていながら、機械的な振動音がわずかに響くだけの広大な空間は、精霊しか辿り着くことのできない不気味な洞窟のようだ。
「これはいったい……」ヒネはその異様な光景に、怖気すら感じながら見入っていた。
突然、すぐ前にあった筒の中の男性が目を開ける。その目は薄い青色だった。どこを見るでもなく、ぼんやりと宙に視線を向けている。ヒネは、透明な筒の壁面に手を添え、中の者と会話を試みた。もちろん意識の中で、である。
「あなたがたは誰でありますか? いったいどこからいらっしゃったのです?」
だが、男性は何も答えようとしない。ヒネは、男性の意識が覚醒していないのかと思い「ならば」と男性の意識に直接潜り込み、自分の意識と重ねてみた。しかしながら、やはり言葉が通じないのである。
それだけではなかった。彼は、自分が何者で、なぜこのようなところに入れられているかも理解できていないようである。
ヒネは、隣の女性の意識に移り、そのまた隣の女性にも移ってみた。結果、どの者もたいした差はなく、一様に同じであると気がつく。
そして何人かの意識に入るうちに、もう一つ発見があった。この者たちの筋肉量である。液体の中に入れられているので正確ではないが、しかし液体の中にあってすら、その筋肉量はヒネよりずっと多いように感じた。
ヒネは、冷たいものが背中を走るような感覚がした。
「これはもしや……」そう思ったときである。
「ここで何をしているの?」
前触れもなく後ろから掛けられた声に、意識のままのヒネは、凍りついたように固まった。
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