魂の泉、潮流の先へ
ヒネは寝床の上であぐらをかくように座り、目を閉じた。
ガルシャとヨヲセの三人と共に、ヒネはガルシャの家に場所を移していた。
ガルシャの家の扉を入ってすぐ、普段はヨヲセが使っている寝床の上だ。この家はスベラギの塔から地上を数分歩いた所にあり、はっきり言って不便だ。しかしヒネは、この家がなぜかとても落ち着く気がする。
目を閉じたヒネは、静寂の中へと一瞬で精神を落とし、眉間の数センチ先辺りに意識を集中する。たちまち光が中心部へ圧縮される感覚があり、やがて眉間の先に光の玉のようなものが生まれる。十分に光の玉が大きくなったところで、ヒネは自らの意識を光の中へ投じる。
ここまではヒネが魂の泉をたどるときにいつもやっている流れである。いつもはここから、自分が見たい“誰かの記憶”に少しずつ焦点を合わせていくか、あるいは向こうからやってくる記憶を受け入れるようにしてのぞいていくのだ。
だが今回は違う、初めての試みだ。ガルシャが耳元で囁くように言った。
「いいかい? これはただ魂の泉をたどるのとは違う。流れを見つけて、その中のさらに一時点を捉えるんだ。あたしが案内してやるから見失うんじゃないよ」
ガルシャが、ヒネの肩甲骨と肩甲骨のあいだ辺りに手を置く。とたんにヒネの意識の中で、眉間の辺りがさらに眩く光る感じがした。もともと目は閉じているが、あまりの眩しさに目がくらむような感覚を覚える。
しばらくして光が落ち着いてくると、ヒネは意識の中ではっきりと自分の前方に光の玉があるのを捉えた。
「追いかけな」
意識の中でガルシャが囁く声を拾う。言われたとおりにヒネは光の玉を追いかけはじめた。
光の玉はどこまでもどこまでも進んだ。空間を超えて、時空を超えて、どことも知れぬどこでもない空間をひたすらに飛んでいく。どのくらい飛んだだろうか、一瞬のようでもあったし、永遠ともとれるくらい長かった気もする。そうして、ようやくヒネは意識の片隅で見覚えのある魂の音色を見つけた。
「あれだ」それは紛れもなく、いつか寝ているときに視た「肉の夢」の主である魂だった。たしか名前を「ジンナ」といっただろうか。
ジンナの魂は一つの美しい流れとなって、そのすべての時点で輝いている。右へ左へとうねりながら無数の分岐や対流が起こる中で、魂の流れはずっと先までひそやかに続いている。
やがて流れの中間時点辺りで光の玉は速度を落とす。そのすぐ先で、流れが二手に分かれているのをヒネは捉えることができた。ちょうどその分岐点辺りに、今まで追いかけてきた光の玉が吸い込まれるように消えた。
「あそこだ」ヒネは迷うことなく、光の玉が消えた辺りに意識で飛び込んだ。
意識の中で目を開いたヒネは、いつかの『肉の夢』の主、「ジンナ」として、その世界を眺めていた。




