崖っぷちアラフォー女子の婚活③
いったいなぜ結婚がしたいのだろう。
まだ若かったころは、完全に見栄のためだった。同性・異性を問わず羨望の的だったジンナは、いつでも完璧で、それでもまださらに「幸せな人」と思われたかった。幼いころから勉強でも習い事でも何でもできて、皆の憧れる大学へ入り、感心されるような会社へ入ったのだ。それなら最後は、素敵な男性と幸せな結婚をして「さすがだわ!やっぱりあの人には勝てない!」そう思われたいと本気で考えていた。
だがそれも、30代半ばを過ぎたあたりからは「惨めな人と思われたくない」「若いころがピークだったわね」などと思われ、蔑まれたくないという意地に変わった。
そして今年、40歳になるジンナには新たな、かつ抜き差しならない事情が加わった。
――お金がないのだ――
「腰掛け」のつもりで入社した大手企業だったが、同期が次々と結婚して退職していく中でジンナだけがとり残され、気が付けば同期の女性の中で在職していたのはジンナだけとなった。いつの間にか課長の役職を与えられ、不本意ながらも仕事はそれなりに順調である。それならばこの先は結婚できずとも、せめて豊かな老後をひとりで満喫できればと思い、不動産投資を始めたのだが……その矢先に、会社が倒産してしまった。
日々の生活費もままならなくなり、さすがに不動産投資は諦めようと不動産会社に相談したが、中途解約が契約上かなわず、多額のローンだけがそのまま残っている。
どうにも立ち行かなくなったジンナは、行きつけのスナックで仲良くなったキャバクラ嬢の女の子に勧められ、熟女キャバクラで働くことになって今に至る。
絵に描いたような転落だとジンナは自嘲する。こんな姿、真理恵はおろか、ほかの同級生にだって絶対に見られたくない。だが、そんな見栄以上に今は生活が苦しい。当時住んでいた都内のマンションは早々に引き払い、郊外の安アパートに引っ越したのは、ジンナがキャバクラ嬢を始めてすぐのころだ。エアコンよりこたつの方が暖房代は安いらしいという噂を聞き、人生で初めてこたつを手に入れた。こたつはたしかに快適だが、やはり上半身は冷える。厚めのカーディガンを2枚重ねで着込んで迎える正月は、なんとも惨めに感じた。
以前は、専業主婦になりたいと本気で思っていたし、専業主婦をさせてくれる相手じゃなければ結婚はしたくないと考えていた。だが今は、自分が働いた給料と合算して、なんとかやりくりできるくらいの手取りがある男性で十分だ。容姿もこだわらない、ましてや学歴なんてどうでもいい。ただ安心して日々を穏やかに暮らしていければ、それでいいと本気で思っているのだ。
しかし、熟女キャバクラで働くキャバクラ嬢となった今では、そんな些細な夢ですら叶う気がしない。働きはじめて1年、それなりに人気も出て、通ってくれるお客様は増えた。ジンナを女性として欲し、付き合いたいと言ってくれる人もいる。だが、そういう人に限って既婚者だったり、要介護の手前のような高齢者だったり、なんの仕事に就いているのか……そもそも仕事といえるのかどうかも怪しいようなことを生業としている人ばかりだった。




