正反対の姉妹
ヒネが生まれ育った共同体家族は、ここアマトよりカミカタヒガシ(北東)の方角にある。マガという小さな都市で、歩いて向かうことは不可能な距離にあり、飛行艇で約4時間もかかる遠い地である。
ヒネの母が亡くなり、リタの母親が新しい養育者となってすぐ、ヒネの社会的獲得点数がリタに知られてしまった。リタは、それまで社会的獲得点数を少しでも増やすことが生きがいで、実際に同じ年頃の者たちよりは比較的高い得点数をもっていた。ところが、ヒネの得点数を知って以降は、しだいに自分の特別な才能である“神呼の能力”に関心が移ったようにヒネは思う。
パムゥの社会では、神呼の能力をもっている者はたいてい、もてはやされる傾向にある。自然との調和の中で生きるパムゥの人々にとっては、動植物をはじめとする自然はもちろん、あらゆる万物に神聖な魂が宿っていると考えられている。これもシュバウル人から引き継いできた価値観のひとつであり、そのため精霊の声が聴ける者、魂の泉をたどれる者はありがたい存在とされる。だから多くの、神呼の力を有する者は、その能力の高い低いに関わらず自らの力を人目にさらすことを拒んだりはしない。神呼として、その能力を発揮することは、他者に貢献できる貴重な機会なのである。
だがヒネの考えは違った。幼いころからヒネは、自身の神呼の能力を認識してはいたが、あまり人には知られないようにしてきた。なぜなら神呼は、多くの精霊の声を聞くこともできるが、それ以上に人の心の内もよくみえてしまうからだ。誰しも隠しておきたい本音や本心はある。人並み以上に優秀な神呼の力を持っていたヒネには、幼いころからそれがよくわかっていた。多くの人は、神呼の力をもつ者を頼り・敬い・感謝もするが、その一方で個人的にはあまり深い仲になりたくないとも思っている。中には、神呼に対する純粋な畏怖の念から気軽に付き合えないという者もいるだろうが、多くの場合は自分の中の醜い部分や汚い感情を悟られるのが怖いのだ。
敏感にそれらを感じ取っていたヒネは、幼いころから常にどこか孤独を抱えていた。だからこそ、これ以上の孤独は避けたいと思っていたのだ。たとえそのせいで誰かに貢献できる機会を自ら捨てることになっても、ヒネは自分自身を守る方を選んだ。
――自分はなんと浅ましく、弱い人間なのだろう――
一方でリタは、その能力を隠すことなく公のものとし、多くの問題ごとや困りごとに積極的に首を突っ込んだ。しかしヒネの懸念に反し、リタは意外なほど多くの者から支持を得て、ますます人気者になっていったのだった。




