表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【みなそこの夢】~夢で“知らない歌”を聞く少女と、忘れられた大陸~  作者: 幹まなと
【第3章】シュバウル人の叡智が宿る大陸”パムゥ”
16/52

完全に平等な社会を実現させる強固な信念

 パムゥに人が降り立って以来、約1200年間、社会は平和そのものである。

 人々はほとんど皆、なんらかの共同体家族に属して生活をしている。子どものうちは養育者と同じ共同体家族で過ごすことを余儀なくされ、自らの意志で物事を判断できる大人になって以降は、一生を同じ共同体家族の中で過ごす者もいれば、別の共同体家族へと移る者もいる。気の合う者・思想の近い者・志を共にする者たちと暮らし、自分の理想とする生活を求めて人生を謳歌するのだ。

 またパムゥには通貨制度がなく、したがって金銭もない。

 スベラギと呼ばれる政府組織が人々の円滑な営みを支えており、法律も完備されているが犯罪はめったに起きない社会である。

 このように、平和な社会を実現させている要因はどこにあるのだろうか。


挿絵(By みてみん)


 基本的な前提として、パムゥでは皆で協力して需要に応じた供給を満たし、すべてを分けあって生活をしている。

 食料や生活用品といった必需品に関する生産・管理・分配は、スベラギが統括して行う。人々は、食料と引き換えられる「食科物受給権しょっかぶつじゅきゅうけん」と、その他生活に必要な物資と引き換えられる「生活物受給権せいかつぶつじゅきゅうけん」をスベラギから毎月支給され、個々の需要を必要最低限に満たしている。生活全般に必要な物以外は、物々交換か抽選が主流であったが、数十年前に導入された「価物受給権かぶつじゅきゅうけん」によって嗜好品を得ること、また趣向に合った品々を享受しやすくなった。

 供給においては主に3つの方法で賄われている。一つ目は、労働力・食料・その他物資全般といった必要なものをスベラギが人々に募るか、あるいは供給が適いそうなところに直接依頼し、それに人々がこたえるかたちで提供される。二つ目は、住人に任意で作った品物や技術を地方の役人に提示してもらい、スベラギが採用することで供給にまわす方法だ。スベラギに採用されたからといって報酬が得られるわけではないが、必要な資材や供給できる場所、また研究等に必要な物資や労働力の提供をスベラギから受けることが可能となるため、人々はこぞって申請をしたがる。三つ目は、需要の説明でも触れた、個別間でのやりとりである。これは主に地下街の一角や交流の場などで行われ、物々交換か抽選、あるいは価物受給権との交換によって個別に行われている。


 しかしながら、人々の善意だけで、円滑な社会秩序を維持できるだろうか?人は楽をしたい生き物であり、より多くを得たいと思うのが本能だろう。物質至上主義の社会で生きる者が見れば、パムゥの社会は非常に奇妙で訝しいと感じるかもしれない。しかし、パムゥの人々の価値観を少しでも知ってもらえるならば、その思想にいくらか共感を得られるのではないだろうか。


 パムゥでは、人々は皆、魂の泉から生まれ最終的に魂の泉へ戻ると信じられている。魂の泉へ持ち帰ることができるのは「経験」ただ一つだけだ。したがって、豊かさとは経験であり、他者と築き上げる関係性の中にしか存在しないと考えられている。そのため、物質的に多くを得て、いくら不自由のない生活をしたところで、それは真の豊かさではないのだ。そのような、物質的に大いに満たされた者がいたからといって、誰も憧れず尊敬もしない。むしろ、哀れまれたり心配されたりするのが末路であろう。

 人は皆、何かしら一つくらいは才能があり、誰もが我を忘れて没頭できるような対象があるはずだ。それを探し当てて身を投じたときに、あるいはその結果、他者に貢献し喜ばれることで、人としての真の欲を満たせるとパムゥでは考えられている。パムゥの人々にとって「楽をする」という意味は、自身が楽しく難なく打ち込めることに取り組むことと同義であり、「より多くを得たい」という欲の対象は、物ではなく経験と他人からの感謝なのだ。


 そしてこれは、パムゥの社会で採択されている「社会的獲得点数」といった“制度”あるいは“仕組み”によって可視化され、より強固な信念となっている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ