カダ25歳ー依頼ー⑧
≪前回のおわり≫
「そこで君に頼みがある」
シュガは、ようやくこの話までたどり着けたと感じる。
それは、カダを今日ここへ呼んだ、まさにその“理由”であった。
「君に惑星パムゥの本意を判じてもらいたい。パムゥの「声」を聴ける者を見つけ、それを判じることで、惑星パムゥの意思を明らかにしてほしいのだ。のみならず、惑星パムゥに住む者、それは現在あそこに住まう者だけではなく、この先におけるすべてのパムゥの民の総意を見つけてほしい」
カダは眉をひそめた。シュガは、カダの顔に不安の色がよぎるのを見てとった。
無理もないことであろう。星の行く末を判じるなど、その重責たるや、想像に難くない。
しかし、カダの能力はシュバウル人から見ても突出している。動植物のみならず、あらゆる自然が織り成す声、さらには惑星そのものの声まで聴くことができ、判じられる者があるとするならば、このカダを置いて他にはいないだろう。これは、現在いるシュバウル人全員の一致した見解であった。
カダはシュガに問う。
「仮に、それでパムゥの本意が、あるいは総意が『水などいらぬ』『新しい者たちを拒む』とあらば、そのときはいかがなさるおつもりだ」
「その際は、ただちに我々が彗星の軌道を修正し、惑星パムゥから遠ざけると誓おう」
シュガはよどみなく答える。
「先ほども聞いたが、確認のためにもう一度お聞きしたい。さようなことが本当に可能なのか?」
カダは訝しげに問うた。しかし、シュガはわずかに口元を緩めて答える。
「我々シュバウル人の英知を見くびらないでおくれ。造作もないことだよ。ただし期限は、尾が出るまでだ」
「尾?」
カダが再び問うと、シュガは答える。
「彗星が惑星パムゥに近づき、やがて至近距離まで近づいてくれば、尾のような長い帯を引くようになる。そうなれば、我々が軌道修正をしかけたとしても間に合わないだろう。それまでに、なんとか君には惑星パムゥの本意を見つけてもらいたい」
「私は……しかし……」
カダは目を伏せ、言いにくそうに言葉を続ける。
「彗星が参るのは70年ほど先のことであるとそなたは申された。仮に、ぴったり70年先ならば、私はそのころ95歳になる。生きているかどうかも約束しかねる年齢だ。それまでに惑星の声を聴ける者を見つけられなかった場合、私はこの件を引き継げる誰かを運よく見つけられるだろうか……」
カダがそこまで話したとき、突然カダの足元で、床の一部が開いた。その中から箱を載せた、床と同じ素材でできた台が、カダの胸元付近まで伸びあがる。
目の前の無機質な灰色の箱に、カダは視線を落とした。
「箱の中をあらためてほしい」
シュガの言葉に促され、おそるおそるといった様子でカダは手を伸ばし、箱の留め金をはずした。二つの直方体の入れ物が向かいあわさるかたちで閉じられた箱の、上半分を押し上げると、中には透明なガラス製の、筒のようなものがびっしりと並べられ収まっている。それぞれの筒の中は、ドロリとした半透明な緑色の液体で満ちている。
「これは?」
カダは、シュガの方に視線を戻して問う。




