カダ25歳ー依頼ー⑦
「人同士が争うならば、その原因はどこにあると思う?」
シュガは「新しい者たち」の方を見やりながら続けた。
「それは未熟であるがゆえに他ならない。
未熟さとは経験の足りなさであり、知識や知能が十分でないことも、それを助ける要因となる。
原始の段階では、人は生存そのものに対して強く執着する。『食べること』に始まり、『安全な寝床』を求め、子孫を残すための『異性』に執着する。そして本能のままに争い、奪い合って己の欲を満たそうとするのだ。そうして、経験と知恵を積み重ねる中で、争いの種は少しずつ数を増やしていく。
争いの種となるものはさまざまだけど、もっともわかりやすいのは互いの『違い』と、それを『理解できない』こと、そして『受け入れられない』ことにある。見た目の違いはもっとも単純で、もっとも大きな違いだと感じるだろう。
やがて文明が追いついてくれば、思想の違い・価値観の違いで争うようになる」
カダは眉をひそめる。
「いったい何がしたいのだ? シュガ、そなたは先ほど『新しい者たち』の見た目にあえて違いを持たせたと説明なさった。だがそれは、そなたの言うまさに『争いの種』を仕込んでいることに他ならない。『より永く生きながらえさせるため』と今しがた申されたばかりではないか? それならばなぜ……」
カダに視線を戻したシュガの目には、憐憫がこもっていた。
「その通りだよ、カダ。争いとはいつであっても無意味で愚かしいものだ。
だからこそ、君たちには、そのような段階を飛ばして繁栄してもらいたいと望んだのだ。我々は、ただ単純にシュバウルの血を残したかったわけではない。永く培ってきた我々の英知を失うことを恐れ、シュバウルがこの先も繁栄し続けるようにと願ったからだ。
だがそれは、我々の傲慢さに他ならなかった。
かつてシュバウルの星がそうであったように、惑星とは、惑星自身が育む命と共に成長していかなければならないのだ。
その中で、星自身を危機にさらしかねない愚かな行為をする者たちがあったとしても、最初から成熟した者たちに支配されるよりは、よほどその惑星らしくあることができる。
つまり、いかに愚かで嘆かわしくとも、それを経験することは……いや、経験するからこそ、星も人も成長でき、その命を輝かせることができるのだ。そしてそれは、より永く惑星を生きながらえさせることと同義であり、その惑星に住む者たちの命もまた、より永く生きながらえさせることができる」
ああ……とカダは、どうしようもなく突きつけられた現実に悲嘆するように、空を仰いだ。
そんなカダの様子を見て、シュガは一つ大きく深呼吸をすると、いくらか声音を明るくして言った。
「しかしカダ、これはあくまで我々の勝手な見解に過ぎない」
カダは視線を戻し、そのまま無言でシュガを見つめた。
「実際のところ、惑星パムゥが何を望んでいるのか……ひいては、魂の泉が何を望んでいるのか我々には判断できない。そして何より、この惑星パムゥは、すでに君たちが実権を握っている星だ。今、この星を生きるそなたらに判断をゆだねるべきなのだ」
カダは眉を上げ、シュガの言葉の真意を探す。
「そこで君に頼みがある」
シュガは、ようやくこの話までたどり着けたと感じる。
それは、カダを今日ここへ呼んだ、まさにその“理由”であった。




