カダ25歳ー依頼ー⑥
シュガは目を伏せると、辛そうに次の言葉につなげる。
「だが我々にはできなかった。そうとわかっていても、大切な子孫である君たちを、荒野に解き放つような真似はできなかったのだよ」
カダが目を上げる。シュガは続けた。
「だからこそ惑星パムゥの自然を、あるがままの姿を何より尊ぶように、そして先住の動物を傷つけぬように共存を図れと教育した。
科学技術が生む産物は、その用をなさなくなったのちには、自然にすぐ還るように作りなさい、と。それこそが進化だと伝え続けてきた。
なぜなら、そうすることで……いや、それこそが、その成長段階に見あわない君たちを、惑星パムゥの住民として受け入れてもらい、生きながらえさせる手段であると信じたからだ」
シュガの目が潤む。
「だが、やはり、“こと”はそんなに簡単な話ではなかったようだ。
成長に見あわない『住民』は、いわば体内に入り込んだ毒と同じなのだ。それは少しずつ体を蝕み、やがて取り返しのつかない状態まで追い込んで、最終的に死をもたらす。
そうなる前に解毒しなければならないし、たとえそうせずとも毒を必死で体外へ排出しようとする……それが自然の理なのだよ」
カダの目に浮かぶ憂いは、もはや諦めにも似た色を帯びはじめる。
「あそこに眠るのは『新しい者たち』だ、我々はそう呼んでいる。
来たる日に備え、君たちよりも筋肉量を増やし、今より低酸素の環境下でも対応できるように、少々遺伝子に手を加えた。
あの筒状の物は、人工の子宮だ。あの中で、胎児は成人になるまで育つことができる」
シュガの説明を受け、カダは怪訝な表情を浮かべた。もう一度見下ろした筒の中の“ヒトたち”は、よく見れば腹の中央からへその緒のような長い管が伸びていると気が付く。
「いったい、いつから……」
シュガは、微笑んで返す。
「つい最近のことだよ。君たちのときとは違い、大きく遺伝子を変える必要はないからね。
彼らは君たちの遺伝子と、惑星パムゥの先住の動物、人型の動物の遺伝子とを掛けあわせた文字通り『新たな者たち』だ。
惑星パムゥに生息する先住の人型動物が、独自で進化を遂げようとするなら、気の遠くなるような月日を必要としよう。
だが、もともとの遺伝子構造は我々とそう遠くなかったことが、交配を可能にしてくれた。惑星パムゥがもともと生み出した存在との交配であるならば、あるいは惑星パムゥも、今度こそ拒否反応を示すことなく彼ら「新しい者たち」を祝福し、育んでくれるのではないかと期待している」
シュガは次に、子どもが悪事を告白するかのような表情になって続けた。
「くわえて、肌と目の色など、見た目にさまざま違いを設けた。」
カダは目を見開く。
「いったい、なんのために……」
一拍置いたのち、シュガは静かに答えた。
「より永く、生きながらえさせるためにだよ」
カダは再び、シュガの意図するところが見えないといった様子で、困惑の色を浮かべた。




