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カダ25歳ー依頼ー⑤

「人の成長……段階?」

 カダの問いに答えるように、シュガは続けた。

「人は赤ん坊で生まれたのち、しばらく子どものうちは周りの者によって世話を受けながら、さまざまなやりとりの中で「この世界」の概要に触れる。

 やがて大人でも子どもでもない複雑な時期を迎え、中には心の均衡を崩す者や、意味もなく周りに反抗する者もいるだろう。過程や程度はさまざまだが、いずれにしても偏った自身の思想や周囲との軋轢あつれきの中で、自分自身を見つけようとする時期だ。

 さらに成長し、大人になってからも、社会生活の中で愚かな失敗や失望の機会を重ね、そうしてしだいに経験と知恵を積み上げていく。

 やがて十分に成熟し老成したのちには、最終的に魂の泉へと還っていくのだったね?」

 カダは、シュガの意図するところを掴みかねるように、目をしばたたく。シュガは少しだけ微笑み、そのまま続けた。

「星も同じなのだよ」

 シュガは、今は亡き最愛の人、ラーヤを思い浮かべていた。

 それは、かねがねラーヤが語っていた話である。ラーヤは「惑星の医者」であった。さまざまな惑星に対して深い知識を持ち、その成り立ちと行く末を見守る中で、できる限り惑星が長く生き続けることができるようにと尽力した研究者だったのだ。

 そして、かつては、「新しいシュバウル人の、惑星パムゥへの移住計画」に最後まで反対していた一人でもあった。

「星の成長段階に見合っていない、今の段階での移住は、惑星パムゥを害することになりかねない」

 そう言って、他のシュバウル人らにラーヤは訴え続けた。しかし最後まで、その声はついに届くことはなかった。だが、皮肉にも1000年以上の時を経た今になって、ラーヤの話が正しかったことが証明されつつあった。


「惑星もまた、魂の泉より命を得た存在なのだ。生きているのだよ」

 シュガは、先ほどの自身の言葉を言い直すように続けた。

「生命が根付きはじめ、ようやくそのかたちをなしてきた惑星パムゥは、さしずめ少年・少女のような段階であろうか。だがそんな成長真っただ中の折、突然、成熟した文明を外から持ち込まれたとしたら、それはパムゥの星にどのような影響を与えるだろう」

 シュガは確信していた。カダなら分かってくれるはずだ、と――。

 カダのことも、幼少のころからシュガは見守ってきたのだ。

 カダを産んだ母親は、カダが育った共同体家族とは縁のない女性だった。もともと子どもには縁のない、演劇を生業とする共同体家族が、カダの育ての親だ。そのため、そこにはカダ以外に子どもはいなかった。周りの大人は、カダに優しく接していたし、遊んでくれてもいたようだ。それでもカダは物心がついたときから、大人の考えや価値観の中で成長してきた。


挿絵(By みてみん)


 おそらくカダは、成長し、大人になった今でも、人との距離がうまくつかめず孤独を感じやすい性格のはずだ。それは、そういったことが影響していると推測できる。

「人が、その成長段階に適した環境の中で、成長段階に見あった生活を送ることは思いのほか大事なことであるのだよ。そしてそれは、惑星にもいえるのだ」

 そう言ってシュガは目を伏せると、辛そうに次の言葉につなげる。

「だが我々にはできなかった。そうとわかっていても、大切な子孫である君たちを、荒野に解き放つような真似はできなかったのだよ」



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