カダ25歳ー依頼ー①
シュガは、自分を強く見つめる男から目を離せないでいた。
――似ている
それはかつての親友であり、自分が愛した女性が、唯一、真に愛した男でもある。名をリュアリといった。
目の前にいるカダは、リュアリに劣ることのない美青年だ。だが、見た目はさほど似ているわけではない。だから、傀儡を使って交流していたときには気がつかなかった。
しかし、先ほど隣の部屋で佇むカダの、実際の姿を目にして、シュガは驚いた。カダの魂が放つ音色や周波数、その特徴のすべてが、かつてのリュアリと瓜二つなのだ。シュガは、皮肉ともいえるような因果を感じ、心の中で自嘲する。
シュガは間もなくこの者に、リュアリを思い出さずにはいられないカダという男に、残酷な真実を告げた上で、過酷な仕事を頼まねばならない。
「カダ、惑星パムゥにとって、これは千載一遇の機会なのだよ。そして、それと同時に、君たちパムゥの民にとっては、最大災禍の危機となるはずだ」
眉をひそめるカダを見つめたまま、シュガは丁寧に話を続けた。
「その彗星は、先ほども伝えたようにかなり巨大だ。具体的には惑星パムゥの4分の1ほどもある大きさなのだ。
だが、その核となる部分の質量は軽く、表面を覆うのは大量の水素氷となっている。
そのせいで、接近するまでの大きさは、惑星パムゥの3分の1くらいの体積として観測されるだろう」
いまいち要領を得ない様子のカダに、こんな現実味のない話では無理もないと、シュガは微笑みを向ける。
「我々が、惑星パムゥに新たな定住先を夢見たのは、この星に豊かな水があったからだ。
だけど、豊かと言っても、それはあくまで“他の星に比べれば”の話だ。もともと、決して十分であるとはいえない。今は事足りているように感じていても、この先、人や動物の数がさらに増えるなら、君たちも動植物もいずれ深刻で慢性的な水不足にあえぐことになるだろう。
さらに言うなら、軽すぎる重力と多すぎる酸素量も問題だ。これは巨大生物たちにとっては必要不可欠な要素ではあるが、そのせいで君たちは、パムゥの大陸以外に移り住むこともままならない。
あと数千年と経たず、今の寒冷氷期は終わりを迎えるだろう。どうあがいても、今のようにパムゥの大陸だけに住み続けることは不可能なのだよ」
ゆっくりと穏やかに、シュガはカダに説明していく。カダは、賢く機転の利く男である。シュガの話を聞くうちに、少しずつカダの目の色が変わっていくのをシュガは感じた。
「それはつまり、シュガ。そなたが申されるのは、その彗星を覆う氷より、水を、惑星パムゥが拝領しようという話であるか?」
目を丸くして問うカダに、シュガは静かに答えた。
「そのような策も、やぶさかではないという意味だ」
カダは言葉に詰まり、しばらく逡巡したように押し黙ったあと、目を上げた。
「そもそもの話である、その彗星が最接近する際、この惑星からは35万キロメートルから150万キロメートルの範囲内を通過するとの説明だったはずだ。そのような場所からどうやって水を運び入れるのだ」
シュガは静かに説明する。
「運び入れる必要はない。その彗星に、自ら惑星パムゥへ接近してもらうのだよ。衝突しない、かつ惑星パムゥの重力が十分に及ぶ絶妙な距離まで来てもらえれば、あとはラーヨウの光で溶け出した氷が、勝手にパムゥへと降り注いでくれる」
「そのような都合のいい話が……先ほどそなたは、35万から150万キロメートルの距離と申されたではないか。絶妙な距離まで来てもらうとは、いかようにして叶えるおつもりであるか」
カダが反論すると、シュガの目がいくらか鈍く光った。




