カダ25歳ー遭遇ー⑤
それらは明らかに動物のようである。
それだけではない。二本の足に二本の手、肩の上には頭部があり、顔には眉毛に目・鼻・口とある。あれは、どこからどう見ても人の姿だ。
みな一様に、頭を下にして体を丸め、筒の中で浮いたように収まっている。筒の中は液体で満たされているのだろうか。
「あれは、いったい……」
カダがつぶやいたときだった。
「魂の泉が、我々の還る所であるならば、この世界はいったい何なのだろう」
聞き慣れた声が左隣から聞こえ、はっとしてカダは振り返る。
左にあるガラスを挟んだ隣の部屋で、暗闇に浮かびあがるように立っている男性が目に入った。
男性は、鎖骨の辺りまで真っすぐに伸びた銀色の髪に、吸い込まれそうな翠緑色の瞳をした人物であった。日頃より、その美しさをたたえられることの多いカダであったが、そんなカダでさえ見劣りしてしまうかのような美麗な姿である。
「シュガか」
カダの短い問いに、シュガは目を細める。
「カダ、ようやく会えたね」
実際に耳にするシュガの声は、傀儡のときよりもさらに澄んだ優しい響きをしている。
だが、せっかく本物のシュガに会えた喜びもよそに、先ほど目にした光景の方が気になってしまい、カダはシュガに尋ねた。
「あれは、何であるか? 私には人のように見えるのだが」
カダは動揺を隠してはいたが、最後の方は自分の声に震えが混じるのを感じた。
「人だよ。“新たな者たち”といった所か」
シュガは澄んだ響きの声のまま、きっぱりとカダに告げた。
カダは、次の言葉を見つけられず、すがるような眼差しをシュガに向けた。
「カダ、間もなく惑星パムゥは、新たな転換点を迎えることになる」
シュガは、カダの目を見つめたまま、諭すように話しはじめた。
「具体的には巨大彗星、いや、もはや小惑星と言っても過言ではない巨大な星が、惑星パムゥに接近する」
カダは眉をひそめ、シュガに問う。
「それはつまり、惑星パムゥに巨大な星が衝突するということであるか?」
しかし、シュガは穏やかに微笑み、わずかに首を振った。
「衝突はしない。近くまで来るというだけだ」
その言葉に、カダは胸を撫でおろした。
「我々の計算では、惑星パムゥのおおよそ35万キロメートルから150万キロメートル先の範囲内で、巨大彗星は最接近すると見込んでいる。これより70年ほど先の話だ」
カダはさらに眉をひそめた。
70年とは本当にずいぶん先である。そのとき、自分は果たして生きている歳であろうかとカダは考える。
それに35万キロメートルから150万キロメートルとは、ずいぶん開きがある。カダは要領を得ず、シュガに先を促すよう、瞳を向ける。
「ほんのわずかな影響で、軌道はずいぶん変わるのだよ」
穏やかにシュガは続けた。
「カダ、惑星パムゥにとって、これは千載一遇の機会なのだよ。そして、それと同時に、君たちパムゥの民にとっては、最大災禍の危機となるはずだ」
一層眉をひそめたカダは、シュガの話がどこへ着地するのか、必死で考えを巡らせた。




