カダ25歳ー遭遇ー④
シュガとの時間は心休まるものだった。だがカダは薄々気がついていた。
きっと本題は別にある、あくまで今は、カダと信頼関係を築こうとしているのだと。しかし、これほどまで時間をかけて信頼関係を築かねばならないなら、その本題とは、さぞや厄介なのであろうとも察していた。
毎夜通ってくれるシュガと、このまま時を重ねれば、この時間を失うのが惜しくなってしまうかもしれない。それを恐れたカダは、ある晩、シュガに切り出した。
「そなた、何か話があるのであろう? 本当に話したいことが」
表情も熱も感じない漆黒の瞳が、カダをじっと見つめる。
「やはり君は鋭いな」
シュガの声が、観念したように笑う。
「カダ。今夜、時間はあるかい?」
突然のシュガの問いに、真意をはかりかねたカダは眉根を上げる。
「私に直接会ってみたくはないか?」
見上げた空では、勢いよく流れる銀色の雲の合間を、星々が消えては現れを繰り返している。
カダとシュガを取り囲む葦たちも、せわしなく右へ左へと揺れている。時折、湿った土の匂いが鼻を掠めるが、すぐに別の場所へと風が運んでいく。
「ここでよいのか?」
先ほども口にした質問を、カダが確認するようにシュガへ投げかけた。
カダの傍らで、上空を見上げていたシュガは、わずかに首を傾け答える。
「ああ、間もなく着くよ。もう少しだけ、待ってもらえるかな」
シュガと共に向かったのは暗闇の中の草原だった。カダといつも会っていた道端からはそう離れていない。こんな、何もない原っぱに迎えに来るとは、やはり飛行艇のような乗り物なのだろうか、とカダは考えを巡らせる。
その時だった。
突然、まばゆい光に包まれたカダは、気がつけば一瞬ののちに、見知らぬ室内に立っていた。
そこは、ガラスの壁に三面を囲まれた部屋で、天井と床はツルツルとした無機質な銀の光沢を放っている。左右にあるガラスの壁の向こうは、やはり小さな部屋となっているようであるが、暗くてよく見えない。カダは必然的に正面の方に目をやる。
どうやら正面にあるガラスの壁の向こうには、広大な空間が広がっているようだ。空間の天井とおぼしき壁面はかなり高く、そこでぼんやりと光る薄灯りは、かなり遠くの方まで続いている。
ゆっくりと、正面のガラスまでカダは歩み寄る。ガラスの向こうは、やはり広大な空間となっており、はるか下にある床面はカダがいる部屋よりずっと低い位置にあるようだった。そして、遠目ではあるが、整然と並べられた無数の筒のような物を、その場所に確認できた。
「あれは何であろう」
無数にある筒状の物の中に、それぞれ何かが入っていることに気がついたカダは、目を凝らす。そして、中にあるものの姿を捉えたカダは、心臓が跳ねあがるのを感じた。
「人か?」




