カダ25歳ー遭遇ー③
シュガと名乗る傀儡は、それから毎晩のように現れた。
だが、特にこれといった話をするわけでもなく、いつも雑談のような話に終始した。
ある時は、恋人のガルシャに話が及んだこともある。シュガはなぜだか、カダよりガルシャのことをよく知っているようであった。
「ガルシャには“アギチャ”という妹がいてね。妹もなかなか優秀な神呼なのだよ」
シュガの話にカダは驚く。ガルシャに妹がいるなど、聞いたことがなかったからだ。
「最初、ガルシャの養母が探していたのは、妹のアギチャの方だった。神呼の能力に長けた女児がミナナミにいるとアマトの街まで噂が聞こえてきたようで、それを頼りにガルシャの養母は、ミナナミまで赴いたのだよ。それはアギチャのことだったのだけど、当時、アギチャはまだ幼かったんだ。母の元から離すのはかわいそうだとガルシャは思ったのだろうね。アギチャほどではないが、同じく神呼の能力をもっていたガルシャが自ら名乗り出て、アマトまでやって来たというわけだよ」
カダは、ガルシャらしいなと思いつつも、なぜガルシャ自身は断らなかったのだろうと訝しく思う。
「ミナナミの地はアマトよりもさらに海抜が低い。そのうえ土地が狭いものだから、縦に深く穴を掘って、街を形成しているでしょ? だから、ひとたび嵐でも来れば、町は容易く浸水してしまうのだよ。ガルシャの養母はそこを突いた。もし娘を神呼に差し出してくれるのであれば、特別な便宜を図り、より高機能な排水処理施設を作ると両親に約束したのだよ」
シュガの話に、カダは目を見開く。
「それは、違法なのでは……」
ただ違法というだけではない。そのときミナナミにあった施設以上に、高機能な排水処理施設など存在したのであろうか……。それに、困難に苛まれているのであれば、特別な便宜など図ってもらわずとも、スベラギに訴えれば優先的に策を講じてくれたはずだ。
表情のない傀儡が、カダの顔をのぞき込んでいる。
「だからガルシャは、そういったことも含めて、今の制度を改善したいと思っているのだろうね」
カダは、シュガの大きくて黒い目をじっと見る。
ガルシャのことを何もわかっていなかった自分に対し、カダは忸怩たる思いに駆られるのであった。




