カダ25歳ー遭遇ー①
カダが、スベラギの塔とガルシャの家を往復するようになってから、5年の歳月が流れた。このとき、カダは25歳になっていた。
その日もカダは、ガルシャと暮らす家へ帰るため、いつものように真っ暗な夜道を歩いていた。明かりもない原野では、蓄電式の小さな電灯だけが頼りだ。最初のころは、真っ暗な夜道で、寝ぼけて彷徨い歩く巨大生物に出くわしやしないかと怯えていたものだが、今となってはすっかり歩き慣れた道である。
風に揺られた葦が、さらさらと流れるように音を奏でる。静かに囁きあい、くすくすと笑うような葦の声が心地いいい。
カダも口元に笑みを浮かべ、満天に広がる星々を眺めた。穏やかな夜だ――。
ふと、前方に白い影を見た気がしてカダは足を止める。
電灯を高くかざし、少し先まで見えるように照らしてみると、やはり何かいるようである。大きさはカダの腰下程度くらいしかなさそうだ。
灯りに反射する白くて滑らかそうな質感の肌を認め、巨大生物の子どもであろうと当たりを付けた。しかし、それならば、親である巨大生物も近くにいるかもしれない。カダは、辺りを警戒しながら慎重に歩みを進めた。
先ほどまで、辺りを包んでいた葦たちの声は、もう聞こえなかった。次第に近づく“そのもの”との遭遇を、息をのんで見守っているかのようだ。
だが、白いものがはっきりと視界に収まるなり、カダはぎょっとした。
――巨大生物の子どもなどではない。
カダは唾をのみ、しばらく動けないまま、目の前にいる得体の知れない「それ」に目を凝らす。
二本足で立つ「それ」は、瞼も白目もない大きな二つの目が、顔の大部分を占めていた。人であれば、口にあたる部分に小さなくぼみがある。鼻のようなものは見当たらない。
カダの電灯に照らし出された体は、全体的に薄い灰色をしているようだが、光を反射しているせいか銀色にも見える。衣はまとっておらず、銀色に反射する肌の表面は、滑らかでツルツルとして見えた。背丈は、やはりカダの腰下くらいしかない。
「カダだね」
突然「それ」が口を利いた。カダは、驚きつつも誰何する。
「そうであるが、そなたは誰……何者であるか」
「私はシュガという者だ。シュバウル人であるよ」
カダは動転し、言葉を失った。




