カダ21歳ー親友ー②
ところが、事態が突然変わったのは、カダが21歳のときだった。
暖かい季節も終わり、寒さが身に染みるようになったある日、オウガがカムイクジナを去るという話を耳にした。昨年までオウガと同部屋だったカダは、ガルシャと暮らすためにスベラギの塔を出ている。同部屋だったときですら、オウガと話をすることはほとんどなかったが、「ならばオウガも、あの部屋を去るのであろうか」と、ふと気になった。
深く考えるでもなく、かつての自室をちらりと覗いてみた。
部屋の中には誰もおらず、しかし、まだ片づけられている様子もなかったので、「なんだ」とばかりに引き返そうとしたときだ。自室へ戻ってきたオウガと鉢合わせしてしまい、カダの口から、思わず変な声が洩れ出る。
「ふえっ」
そんなカダを、無表情にねめつけながら、オウガが言った。
「“ふえっ”とはなんだ、ここで何をしておる」
だが、カダの返事も待たず、オウガはカダの横を通り抜けて中へと進み、部屋の中央まで来たところで振り返って言った。
「入るのか入らぬのか、扉を開けたままでは寒い。どちらかにせよ」
てっきり、出ていけと言われると思っていたカダは驚く。入るのか入らぬのかの選択肢があるなら、入ってもいいということであろう。そう思い、カダは部屋の中へ一歩進み、扉を閉めた。
「カムイクジナを去ると聞いたのだが」
オウガに背を向けたまま、おずおずとカダはオウガに問う。
「いかにも。5年経ったからな。元よりそのつもりであった」
オウガの返答にカダは振り返り、オウガを見つめた。なぜ「5年」なのか、と訝しく思う。
ちらりとカダを一瞥して、オウガは続けた。
「最低でも4つの部署を各5年以上。選挙に出るための条件だ」
ああ……とカダは思い至る。
「選挙に出たいのか?」
カダが問うと、オウガは鼻を鳴らして答えた。
「選挙に出たいのではない、ミコトになりたいのだ。そして最終的にスベラミコトになる、それが私の夢だ」
カダは目を丸くする。まったく思いもよらなかった話であるからだ。
「だから最初にカムイクジナを受けた。本当なら、もっと早く組織人として認められたかったが、組織人となれたのは結局、通常と変わらぬ16歳となってしまった」
カダは少しずつ、オウガが意図することを理解しつつあった。




