カダ16歳ー出会いー⑤
スベラギの塔は、地下は10階、地上は20階にも及ぶ巨大な塔である。
ここは、パムゥ全土を統括し、人々の生活や健康・治安といったあらゆる面を管理・支援する、いわゆる“政府”とも呼べる一大共同体家族である。しかし、その規模は、もはや共同体家族というには遥かに大きく、巨大な組織として機能している。塔内には二万人を超す人々が、寝食も共に生活しているのである。
「とりあえず湯あみをして温まってからだね」
総合窓口から戻って来たガルシャはそう言って、このまま少し待つようカダに伝えた。間もなくしてやって来た数名の女性に案内され、カダとガルシャは、さらに地下へと下りる昇降機へ向かうことになった。
案内してくれた女性たちは、ときどき二人を振り返っては顔を赤らめたり、コソコソと何かを囁きあったりしているように見える。カダが、自分の様子がそれほどにおかしいだろうかと気にしていたら、ガルシャが背伸びをしてカダの耳元で囁いた。
「あんたがあんまり綺麗なものだから、みんな気になって仕方ないんだ。気にすることはないよ」
ぎょっとしたカダが、前を歩く女性たちに視線を戻すと、やはりカダを振り返っていた女性たちは、慌てて前へと向き直る。
それにしても、ガルシャの言葉遣いは独特であるなとカダが思っていたら、生まれがミナナミなのだとガルシャ自身が教えてくれた。以前、ミナナミを巡業で訪れたことがあったカダは、たしかにミナナミは言葉遣いが独特であったと思い出し、合点がいった。
カダの家族でもある劇団の人々が一人残らず犠牲になったと正式に聞かされたのは、翌日の午後であった。ガルシャの養母もまた、同じく亡くなったらしい。
火災の犠牲者のために、弔いの儀を行ってくれるとのことで、それまでの三日間ほどスベラギの塔に滞在することをカダは許された。
ガルシャと再会したのは、その、弔いの儀であった。
少し疲れた表情でいたガルシャだったが、カダを見るなり笑顔を見せてくれたので、カダはほっとした。
「お義母様が亡くなってね、これでようやく自分の好きなことだけできるって思ったんだけど……」
ガルシャは弔いの儀のあとで、紹介したい人物がいると言ってカダを連れ出した。そこへ案内する途中で、ガルシャがおもむろに話しはじめる。
「変なんだけどさ、いざそうなってみたら、なんだか神呼の修行も続けたいって思うようになっちゃって。おかしいよね……」
そう言って、悲しそうな笑顔を浮かべ、ガルシャは歩きながら俯いた。
「でもね、カダが一緒なら楽しいかもって、そう思うの」
「え?」
ガルシャの言葉の意味を理解できずにカダが戸惑っていると、ガルシャが急に立ち止まった。
「ここ、紹介したい人がいるっていったでしょ?」
そう言って、ガルシャが指し示したのは、塔の一階にある「干し場」だった。




