カダ16歳ー出会いー④
少女は、自身をガルシャと名乗った。
年齢は14歳で、カダより2つ歳下であるらしい。スベラギの塔へ向かう道すがら、今日に至るまでのいきさつを話してくれた。
ガルシャの横にいた中年の女性はやはり大陸の審神者で、彼女の養母であったらしい。幼いころより神呼の才能があったガルシャは、審神者の養母に見込まれ、7歳のころにもともといた共同体家族より引きとられた。
だが、ガルシャ本人は、神呼よりも情報技術の分野に強い関心をもつことになったのだという。
「タルマさんって言ってね? みんな、何考えてるか分からない奴だって言うんだけど、すごい方なのよ、実は!」
ガルシャの話は、彼女がまだ幼いころ、養母に引きとられて間もなくの頃まで進んでいた。
養母の厳しい教育に辟易したガルシャは、ある日たまたま逃げ込んだ塔内の別の階で、タルマという男性に出会ったという。
タルマは、情報技術や管理を扱う部署・カザヒコジムナの組織人で、非常に博識である一方、かなりの変人であった。スベラギの塔に属する者たちは、通常は職務と寝食をあわせ、一日のすべてを塔内で過ごす。だが、タルマは塔の外にわざわざ居を構え、しかもその家はどの地下通路にもつながっていないため、毎日地上を歩いて塔に通うといった生活をしていた。人付き合いをあまり好まず、自身の研究と技術の研鑽に黙々と打ち込むような掴みどころのない人物だ。しかし、どういうわけかガルシャと気が合った彼は、ガルシャを気に入り、まるで娘のように接してくれているのらしい。
養母は、ガルシャがタルマの元に通い詰めることを厳しく咎め、何としても神呼の道を歩ませようとした。ガルシャは、たびたび養母と激しくぶつかり何度も叱られた。しかし、話しあいを重ね、ひとまず情報技術と神呼の両方の分野で学びを受けるということで落ち着いたのだという。
「お義母様は、自分が有能でないことが我慢できなかったのよ」
ガルシャは大人びた口調でそう言った。
「今回だってそう。雲の声を判じられなかったじゃない。大陸の審神者だなんて言ってても、本当は、そこまで能力が高くないんだわ。だから私を優秀な神呼にして、カムイクジナの中で、せめて自分の居場所だけでも見つけたかったのよ」
雨に打たれながらうつむきがちに話すガルシャが、なんだか泣いているようにも見えて、カダは戸惑う。
「お義母様はときどき、ああやって私を人前に出すの。精霊の声を聞いたり、魂の泉から託宣をもらったりするのをみんなに見せて『すごい、すごい』って言ってもらえれば、私もその気になるんじゃないかって、そう考えているのよ。そんなわけないのにね、見世物みたいでほんと嫌!」
吐き捨てるように言うガルシャに、カダは共感を覚えた。
見世物みたい……本当にそうだ。まだ年端もいかないうちから舞台に上げられ、女性として演じることを強要され続けてきたカダは、自身の身の上も同じく「まるで見世物のようだ」と切り捨てたくなる。
「ここから入れるよ」
スベラギの塔がだいぶ近くなってきたと感じたとき、目の前に現れた地下へと続く階段を指さして、ガルシャが言った。
階下の扉を開けると、そこは、大勢の人々が行き交う賑やかな街道の入り口であった。びしょ濡れの二人を物珍しそうに振り返る人々をやり過ごし、スベラギの塔の入口にたどり着く。
塔の入り口を抜けて少し進んだ先は、大広間となっていた。煤だらけの上に、びしょ濡れになった二人を目にとめ、ぎょっとした様子で何人か振り返る。ガルシャは、入り口より少し先の、総合窓口である詰所へ駆け寄り、どこかへ連絡をとっているようであった。




