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惑星パムゥがたどる未来③

 ヒネは別の潮流に意識を向ける。こちらの流れもまた、猛々しいものがあった。

 面白いのは、こちらの潮流は一番太い潮流に並行するように、ずっと流れている点である。そして太い潮流、そのほかの細い潮流のいくつかから、常に分岐し流れ込む時点が多数あることだ。これは、何度回避しても、こちらの流れに向かう可能性を常にはらんでいるという意味であろう。

 それは、血と涙にまみれた、争うばかりの悲しい潮流であった。

 人を撃ち、国を討ち、強者と呼ばれる国家は、留まることなく強国へとなりあがっていく。すべての技術は、争いのために開発されるようなもので、しかし強国に住む人々は無関心にその恩恵を貪り、豊かな生活を楽しんでいる。

 戦いに負けた国はあらゆる略奪を受け、凌辱され、時には言葉すら奪われて、その尊厳までも踏みにじられていく。

 悲しいのは、双方が決して相手を傷つけてやりたい、奪ってやりたいとは思っていないことだ。戦いに赴く人々は、皆が皆、自分たちをまもるためだと思っている。それは、国土かもしれない、伝統や価値観、秩序、解放、平和な生活かもしれない。

 いずれにしても、皆が大切な何かを衛りたいがために、戦っているのだ。

 真の敵はどこにあるのだろう。

 それとも、自衛意識を刺激し、戦いを裏で誘導しているような、つまり策謀を図る者でもいるのだろうか。

 ――策謀の主。


 やがて世界は、大きな大戦へと進んでいく。それまでにも二回ほど大きな争いはあったようである。しかし、かつてのそれらとは違い、三度目は群を抜いて苛烈極まるものであった。

 それは情報戦であり、最先端の、科学と技術の戦いでもあった。

 ばらまかれる生物兵器は、姿すら見せず多くの命を蝕んでいく。しかし、それが偶発的なものか意図的なものかも判別がつかず、また仕掛けた者が誰かもわからないのだ。人々は見えない敵に、怒りをぶつける矛先も見つけられず、ただ混乱と恐怖に陥る

 あらゆる情報が、あらゆる場所から抜かれ、知らぬうちに国家の手先として働かされる者はあとを絶たない。そして、人すら乗っていない玩具のような戦闘機によって、一瞬で万の命がちりと化す。

 報復に報復が続き、しかし表面的には真の敵が誰かもわからない、おぞましい戦い。

 すべての争いが落ち着くころには、世界の人口は三分の一以下に減り、住める土地も限定的となってしまった。


挿絵(By みてみん)


 復興を目指すべき時代が来てもなお、人々は先の大戦により、誰を信じていいかもわからず苦しむ。そして各地で相変わらず続く、略奪と殺しあいの日々。

 しかし、そのような状況にあっても、人とは「生きたい」と願う宿命を背負った存在なのだ。どのような時代であっても、命をつなぎ生活を営んでいかなければならない。そこに垣根など見いだせるはずもなく、もはや国家も民族も用をなさない。否が応でも、少しずつ手をとりあい、皆で生きていくこととなる。

 その後は、やはり数百年、あるいは千年とかからないようであった。人々は混血が進み、見た目は平準化され、社会の在り方や価値観も差はなくなっていった。

 そう、やはりこの潮流の行き着く先も、再びの統一へと落ち着いたのだ。


 ヒネは訝しく思う。まさかと思い、そのほかの潮流もいくつかたどってみた。

 中には他の流れとよく似たものもあったが、大きく違った流れも存在した。

 世界的な病によりやはり人口の三分の一ほど消えるといった潮流。自分たちが設えた天空の建造物によって世界が操られ、挙句それが地上へと落下し、混乱極まるといった愚かさと滑稽の極致ともいえる潮流。中には、このたびの「おつき星」ほどではないものの、巨大隕石の衝突によって、やはり世界の多くが飢餓と混乱に苦しむといった潮流もあった。

 しかしすべての行き着く先は、やはり人々の、そして世界の統一であるのだ。

 ヒネは訝しく思う。

 ――これはいったい、どういうことだろう。



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