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魔導書使いの調伏師  作者: 和泉ふみん
第一章 司、調伏師となるまで
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神様になりました

「紫織…。すまない、俺のせいで…。」


俺は、後悔することしか出来ない。俺は紫織に育てられた。紫織は、親代わりだったし、一人の女性としても意識していた。そんな人を、突然目の前で殺されたのだ。もう人生に絶望しか存在しない。


「ウガアア…ウガア…。」


でも、人に殺されんのは真っ平なんだよなぁ…。せっかく助けてもらった命、粗末にしたんじゃ、紫織に怒られちまう。それに…


「テメエを殺すまでは死ねねえよ、タケミナカタァ!!!」


そうだ、こいつこそ紫織の仇!俺は、素手で殴りかかる。通常状態でも敵わなかったのだ、怒りでパワーアップしたこいつに敵うはずもないのは、もちろん理性では理解している。だが、今の俺に理性は枷にならない。


「フンッ!」


ドガアンッ!!


腕の一振りで吹き飛ばされる。壁に叩きつけられ、全身から血を吹き出す。それでも、怒りのままに向かっていく。そんなことを繰り返すこと10回ほど、司の体はどうしようもないほどボロボロになり、もはや霊力も残っていない。


「くそッ、くそッくそッくそッ!!何で俺はこんなに弱ぇんだよぉッッ!!!」


一度も攻撃が当たらない。その事は俺の心に絶望感を植え付けていく。その一方で、力への渇望も増してゆく。

そんなとき、ふと司の頭をある記憶がよぎる。そして、わずかな霊力しか残っておらず、本の姿に戻ってしまった紫織の姿が目に入る。


「こうなったら…一か八かだ。紫織…もう一度、俺に笑顔を見せてくれ。」


血まみれになった紫織を自らの胸に当てる。そして念じる。


「我、天地 司は欲する。力を、命を。この世に漂う霊力よ、我の願いを叶えるため、我の体を器とせよ。」


呪文と共に、紫織もわずかな光を発する。そして、驚くべき事に、司の体へと紫織は呑み込まれた。胸の中に沈み込むように。

その時



ピカー!!


すさまじい光が、司の体から発された。それは、道場中を真っ白に染め、皆の視界を奪う。


「うおおおッ!!!」


急激な霊力の上昇に、体が引きちぎられそうだ。それでも俺は耐えなければならない。目的の達成のために、紫織を生き返らせるために!



「うっ…。くっ、眩しい!何だこれは…。」


「目がチカチカするのじゃ…。」


「ひええ~。あっ、あれ~!」


気絶していた三人が、あまりの眩しさに目を覚ます。

周囲を見回して驚愕する。そこにいたのは、自らの主ではなかった。


「はあああッ…!」


純白の髪、体は普段より一回り大きく、服装もいつもとは違い神御衣(かむみぞ)を着ていた。そう、まるで本物の神のように。


「あれが、主人なのか…?あっ、危ない!」


司の後ろにタケミナカタが迫る。拳を振り下ろすが、その拳は空を切ることとなった。


「ウガ?」


「遅い。」


タケミナカタは訳が分からなかった。なぜ攻撃を仕掛けた自分の方が、地面に突っ伏しているのか。その疑問は、司の霊力を見れば一発だった。


「ウガアアアア!?」


さっきまでの100倍、いやそれ以上か、とにかく比べ物にならないほどの霊力を誇っていたのである。


「知ってるか、タケミナカタ。この世には、禁術ってもんがあるんだ。人の命を創り出したりとか、逆に人を殺してバケモン呼び出したりとかな。こいつもその一つさ。」


神成(かみな)り。付喪神との精神の合体である、神降ろしからもう一歩進んだステージ、付喪神との精神と肉体の合体。俺の体を一部分け与えて、紫織を生き返らせるモノでもあるな。そいつによって、俺は完全に人じゃなくなった。もう元には戻れない、ずっと神として生きていくことになるのさ。無論、付喪神との分離は出来るがね。でも既に体は創り変わっているから、元に戻るわけではない。これから悠久の時を、あいつらと一緒に過ごしていくんだ、楽しみでしょうがないよ。でもな…。」


司はそこで一呼吸置く。そしてタケミナカタを睨み付けながら、


「そのステージにいくために、お前は必要ないんだよ…。むしろ邪魔だ。お前を倒さない限りは、俺も前に進めねえんだ…。だから、」


「死んでくれるね?」


ドガアンッ!!!


「ウゴオッ!!」


避ける暇を与えず、司のパンチが顔面に炸裂する。後ろに倒れたタケミナカタに乗っかり、マウントポジションを取る。


「安心しなよ、俺はサディストじゃねえから。一瞬で楽にしてあげるよ。」


ドカドカドカドカッ!!!


重いパンチの連続、悲鳴をあげることすら許されない。タケミナカタの意識は既に失われている。


「止めなさいッ!それ以上はホントに死んでしまいますッ!!!」


アマテラスの悲痛な叫びが聞こえる。しかし、その言葉は司の耳には非常に耳障りだった。


「今ごろ出てきてんじゃねえよ、アマテラス。さっきまで腰抜かしてビビってたやつが。」


アマテラスには、言い返す言葉はなかった。神とはいえ、アマテラスも女。タケミナカタの怒りを目の当たりにして、恐怖してしまったのだ。そして、彼を止めることができなかった。それでも、


「私の事は、どのように罵っても構いません。しかし、あなたがやろうとしているのは神殺し、大罪ですよ!復讐を果たしても、私はあなたを殺さねばならなくなります!」


「だったらどうしたよ!俺の怒りは、そんな脅しじゃ収まらねえぞ!」


「もうやめてくださいッ!司さん!」


「この声…。紫織?」


司の胸の辺りから声が聞こえる。


「紫織…意識が戻ったのか?」


「ええ。あなたのおかげで。私のために、復讐なんて止めてください。私はこうして生きている。それでいいじゃないですか。」


「でもッ、お前が受けた痛みとか苦しみとか、それはどこへいくんだ!?」


「いいのです、こんな神のために、あなたのこれからを棒に振る必要はありません。」


「紫織…。分かった。もう、やめにするよ。ホントに、よかった。お前が生き返って。」


「はい、司さんありがとうございます。」


「あー、あのーいい雰囲気になってるとこ申し訳ないですけど~、それ降りてくれません?医務室に運ぶので…。」


そういえばずっとタケミナカタに乗ったままだった。俺はそそくさと降りる。そして、地面に降り立とうとした瞬間、神成りは解除され、俺と紫織は地面に倒れた。


「あー、体の限界か。急に体の仕組みを作り替えたからなぁ。紫織は大丈夫か?」


「私も、体が自分のものじゃないようで…、何だか不思議な感覚ですね。倦怠感もあります。」


「これは、あなた方も医務室に運ぶ必要がありそうですね。徹底検査しますよ、覚悟しておいてください!」


こうして、人間が神になると言う、前代未聞の事件はとりあえずの収束を見せた。しかし、この事が高天原中に広まり、司達が質問攻めにされ、研究のサンプルにされそうになるのは、このあとすぐの話であった。




事件の後日談を後一話やって、1章終了ですね。間に閑話を挟んで2章に突入します!応援よろしくお願いいたします!感想やブックマーク頂ければ、とても喜びます!

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