第3燐 襲撃と策謀
場所は、王城セントラル・フォートレスにある、謁見の間へと続く豪奢な巨大通路――。襲い来る王城兵たちに対し、俺は意識して練る魔力量を半分以下まで落としながら、必殺の一撃を放つ。
『【閃熱偃月】――!!』
白熱した光の大剣を横一文字に振りきった瞬間、巨大な三日月状の熱波が放たれ、襲い来る王城兵たちを跳ね飛ばし、王城の壁へ叩きつけた。
俺が肩で息をしながら振り返ると、俺の仲間たちもそれぞれの得物で王城兵たちを蹴散らし――、得物をしまいながら俺の元へ集まってくるところだった。
「フン……!われの刀の錆となったか……!」
「うわぁああ~ん、シェイシェイ~……!これって、すっごくまずいんじゃないのぉ~……!!」
「ああ、シェイド……。これでは、我々から人類と竜族との和平同盟の提案など、とてもとても――」
「大丈夫ですわぁ~……。シェイドちゃんは、私と一緒に前にも一度王城兵たちを切ったり焼いたりしたこと、ありますものねぇ~♪」
「そ……それは……あの時が特殊な状況だったってだけで――。だが、確かに、こんなんじゃあ――和平交渉なんて……」
俺は、大混乱に陥る仲間たち――あるものは眉間に皺を寄せて冷静に思考し、あるものは慌てふためいて駆け回り、あるものは舌なめずりをして刀についた血に赤き眼光を煌めかせ――を見渡しながら、額から大粒の汗を垂らさずにはいられなかった。
「シェイド様……!これは……」
「ああ……、ハメられた。くそっ……なんだって、俺たちの作戦を知ってるんだ……」
もちろん、人類と竜族の和平同盟なんてもの、反対するものの方が圧倒的に多いはずだ。国民全てにアンケートを取ったところで、9割9分は間違いなく、反対の意を示すはず。俺、二つ名【烈火】ことヴァルカニック・シェイドが実は炎竜でした、なんて告白を持ちだしたところで、覆りようのない数字である。むしろ、大体数は俺を処刑すべきだという意見に染まるだろう。それほど、圧倒的に人類と竜族との溝は深い。竜族は魔物の一種な上、その上位種かつ支配者的な存在。つまるところ、仇敵なのだ。
他の魔物たちはともかくとされることはあっても――。
人類にとって、竜族の絶滅こそが平和な世界への絶対条件かつ、最低条件なのだ――。
歴史が、差別が、かつての力の差が、今の逆転した力関係が――何もかもが、人類を竜の絶滅へとひた走らせる。
いわば元から、少数意見を一時的に通し、そのあとに竜族の信頼を勝ち取っていくという無謀な賭け――先行きも具体的な展望も特にない、未来へと丸投げする竜族の命づななのだ……。
最初から、あまりにも無謀すぎる賭けだったというのに――
「シェイちゃん……これは、頭の悪い私にだってさすがにわかるよ。万事休すだ。今までどんなピンチだって一緒に乗り越えてきたけど――」
「ああ、無理だな。端から一筋の光に縋るような作戦であったというのに、そこにこの兵士たちの襲撃だ。誰かの策謀だということを王様に理解してもらえるとして、俺たちが兵士たちをのしたという噂は俺たちを悪だ、と国民たちに印象づけるだろう」
「シェイズ様……!和平交渉なんて、人類と竜族の同盟なんてもうどうでもいいです!我々と一緒に逃げてください!――あなたがわざわざ、竜族だと告白して、死にに行く必要なんてありません――!!」
「――――……っ!!」
眩暈がする。冷や汗が止まらない。うまく言葉がまとまらず、思考が明滅しては意識ごと闇に堕ちそうになる。
まさに晴天の霹靂であった。しかも、この襲撃の恐ろしいところは、もしかしたら父上の方にも同じく魔の手が伸びているかもしれないということ。もしも、発言力のある竜族によって神龍様に、父上が裏切者だと嘘の告発をされてしまえば――それだけで、こちらとほぼ同じような状況に陥ってしまう。
竜族のプライドは高い。未だに分かっていないのだ、俺たち竜族が人類に完全に絶滅の道へとおいこまれてしまっていることに……。
「シェイド様……!」
「シェッシェエ~……」
「「シェイド……!」」
「シェイちゃん……?」
「「シェイシェイ……」」
「「シェイドちゃん……」」
「シェイド・ブレイズ……!!」
「シェイドくん……」
「け、けど……俺の父上が……今、命がけで神龍様の元へ向かってくれていて……今ももしかしたら――」
「ヴァルカニック・シェイド――!貴様、これは、どういう状況だ――!!」
謁見の間の高さ10Mもあるだろう巨大な扉が、音を立てて開く。
そこから神妙な面持ちで現れたのは、近衛兵たちを引き連れ、腰の粒子加速銃バイオ・アクセラレーターに手をかける国を代表する大将軍――【碧閃の貴公子】ことアスタ・ヴァレンティンだった。
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