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第2燐 11人の仲間たち

 鬱蒼と生い茂る森の中にある、開けた空き地にて――。


『【閃熱一閃(ルクス・バスター)】…!!』


 俺は大剣の剣心に魔力を集中し白く発光する程高熱化させ、一息に振り切った。


 斜め真っ二つに切り裂いたのは、上位魔獣に分類されるケルベロスの胴体。俺の背後でケルベロスの体が倒れる音が響き、俺は大剣を腰の鞘の中にしまい込んだ。


 顔をあげた俺の瞳に移ったのは、11人からなる俺の仲間たちだった。


「「シェイド……!」」


「シェイちゃぁ~~~~ん!!」


「「シェイシェイ……」」


「「シェイドちゃん……」」


「シェイド・ブレイズ……!!」


「シェイドくん……」


「シェイド様……!」


「シェッシェッ~~!!」


「あ、ああ、ただいま、皆……!」


 白人、黒人、黄色人――肌の色の差異こそあれど、大きな種族的な違いはない人間たちの集まりが、俺の仲間たちだった。男女比は4:7でちょっと女性の方が多かったりして。それぞれまったく体格や手に持っている武器種も違う。ざっと言えば、両刃剣、片手剣、槍、ライフル、弓、杖、鋼鉄製のブーツなどなど……。


 いやぁ~、しかし、色んなあだ名つけられすぎだな、俺……。さすがに今まで11人から一斉に呼ばれることはなかったから、改めてその多さを思い知らされると言いますか……。


 11人の仲間たちの中から、白い肌に金髪の女性が歩み出てくる。彼女はレイピアを腰に吊るし、身に纏うドレスも装飾品もなにもかもが細かい意匠が込められた豪華な品となっており、周囲とは明らかに身分が違うことを示していた。


「シェイド様……!私の方から、皆様にはお話をさせていただきましたわ……。あなたが実は炎竜であること……そして、あなたが人類と竜族の間に、同盟――ズバリ、共存の道を歩みたいと考えていることを……!」


「ありがとう……シャリア姫……!」


 決意を込めた琥珀色の瞳が俺をまっすぐ捉えて、きっぱりと言い切ってくる。俺は、小さく頷いて返した。


 彼女は、シャリア・メガロポリス王女。地球上で最も巨大な大王国テラ・メガロポリスの第一王女である。この土壇場で、俺が人類と竜族の同盟を結ぶ、というとんでもない希望を抱いたのは彼女の存在が9割である。


 シャリアは、俺が戦士として戦場に立つようになってできた11人目の仲間であり、知り合ってから3カ月ほどしか経過していない。


 けれど、当たり前な話が王女であるがゆえに――否、それだけでなく、まさかの戦場で活躍する女神でもあるのだから、彼女のメガロポリス王国での発言力は、国王に近いものがあるのだ。


「正直、ぼくは君が炎竜なのは知ってたけど、さすがに人類と竜族との同盟……ってのには驚かされたよ」


「シェイド・ブレイズ……。俺は……俺は……」


「まー、あたしはシェイシェイが竜族だって最初から教えられてたから、全っ然びっくりしなかったけどねー!シェイシェイとはこれからも仲良くしたいもん!」


 思い思いに話始める仲間たちによって、俺は人類史に存在したとされる十数人の話を同時にきけたという偉人、聖徳太子のような状態になる。いや、プチ聖徳太子状態かな。皆が皆、話を被せてきてるわけじゃないし。まあ、十分何言ってるのかわからんかったけど。


 聖徳太子にはなれない俺だが――でも、皆の思いが前向きだということだけは受け取れて、ぼくは思わず感涙を溢れさせそうになった。

 


「ありがとう……ありがとう……。本当にありがとう、皆……!」


「この場にいる者たちは皆、シェイド様に命を救われたり、生きる道に導いてもらったり――皆、シェイド様に恩がある者たちです。あなたが炎竜であろうと、悪魔であろうと……私たちはきっと、あなたの想いを遂げようとしたことでしょう」


「竜族が今更、人類と同盟を結ぼうだなんて、めちゃくちゃ虫の良い話だって分かってるのに……」


「他の竜族がどうだとしても――あなたは違いますわ、シェイド様。あなたの3年の旅路は、多くの人々を救い、数々の村や里に繫栄をもたらした。あなたは――この王国メガロポリスの英雄なのです。私からの提案だからではない。あなただから――【烈火】シェイド・ブレイズの進言であるからこそ、きっとお父上も今回の同盟の話、しかと受け止めてくれるはずです」


「俺は……俺は、本当は竜族だってのに――本当、仲間に恵まれすぎてるぜ……!」



  ―――


 シェイド・ブレイズの父――ヴァルカニック・ブレイズは、竜族の聖地ヘリオポリス・ドラグーンがある方角へと大空を飛びたち――その道中、飛行系の魔物の襲撃を受けて、それを返り討ちにしていた。


 ワイバーンやグリフォン、ハーピーなどの数十にも及ぶ死体に囲まれて、真紅の竜ヴァルカニックは肩で息をしていた。


「なぜ、味方であるはずの魔物たちが、このワシに……?――まさか……!!……くそ、急がなければ――!!」


 ヴァルカニック・ブレイズは気づく。刺客として送られた魔物たちは全て、炎竜の相手にはならぬ小型のものたちばかりだった。しかも、一斉に襲ってきたというよりは、時間差で。さらに言えば、一撃目はしっかり攻撃をしかけて敵対をしめしてきたものの、その後はあくまで回避行動を優先してきたのである。


 ズバリ、目的は、撃墜ではなく、時間稼ぎ――。


 シェイドの父竜ヴァルカニック・ブレイズは、その鱗に覆われた屈強な胸に冷えるような嫌な予感を覚えながら、竜族の聖地ヘリオポリス・ドラグーンへ向けて巨大な真紅の翼をはためかせるのであった。

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