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projectMOTHER~異世界転生したら女神の主と呼ばれている~  作者: 鴉野碧
2:お気楽異世界こんにちは編
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第二十話:密室の作戦会議と、残される騎士の誓い

円卓会議での「勝利」から一夜明け、僕達はシェリルの研究室に集まっていた。

これからの「外遊」――いや、僕にとっては待ちに待った「異世界観光旅行」の打ち合わせの為だ。


窓の外には、ネオ・エデンの象徴である巨大な女神像が、朝日に照らされて白く輝いている。

大気中を舞う光の粒子「マナ」がキラキラと反射して、まるでゲームのログイン画面のような美しさだ。

タイトルとかどっかに出ていないかな?


「さて、具体的な行き先と、カイの身分について詰めましょうか」


シェリルが空中に指を滑らせると、そこには青白く発光する幾何学的な模様――「魔法地図」が浮かび上がった。

複雑な紋様が絡み合い、地形を立体的に映し出すその光景に、僕は思わず「おおっ」と声を漏らす。やっぱり本物の魔法は演出が凝っている。


「第一の目的地は、聖都の南方に位置する交易都市『オーツ』がいいわ。あそこなら他種族の往来も多く、情報の収集にはうってつけよ。何より、カイが望んでいた『下界の空気』を存分に味わえるわ」


「オーツ……。いい響きだね。勇者の旅立ちっぽくてワクワクするよ」


僕が拳を握ると、隣に座っていたイツモアが、すかさず僕の腕に自分の豊かな「果実」を押し当ててきた。


「どこへなりとお供いたしますわ、カイ様。オーツには美味しい特産品も多いと聞きます。……ふふ、旅先での食事、そして夜の……今から楽しみで夜も眠れませんわ」


イツモアの瞳が、獲物を狙う肉食獣……いや、慈愛に満ちた聖母のような(どっちだ?)怪しい光を放っている。出発前からそんなに張り切られると、旅程よりも休憩時間の確保が心配になる。


「……イツモア殿、少し密着しすぎではないか?」


苦々しげな声を上げたのは、重厚な白銀の鎧に身を包んだ鮮烈な赤髪の騎士団長、テトライルだった。彼女の腰には、抜けば空気を切り裂くような鋭い光を放つ魔剣が帯びられている。


「……っ、テトライルさん。そうだ、テトライルさんは一緒に行かないの?」


僕が尋ねると、彼女は悲痛なほどに顔を歪め、その場に跪いた。


「申し訳ございません、プロト・ワン。……我ら騎士団は、現在、国境付近で活発化している無法者への備えを固めねばなりません。……貴方様に同行する誉を、私は……職務ゆえに、放棄せねばならないのです……!」


テトライルの拳が、床のタイルをミシリと鳴らす。彼女にとって、僕と同行できない事は、騎士としての魂を削るに等しい苦渋の決断らしい。……いや、たかだか1週間の旅行なんだけど。


「そんなに自分を責めないでよ。テトライルさんがここを守ってくれるから、僕は安心して外に行けるんだ。……帰ってきたら、またお土産話を聞かせるからさ」


「っ……! は、はっ! 勿体なきお言葉……! このテトライル、命に代えてもこの聖都の門を死守し、貴方様のお帰りを……『最高の状態』でお迎えする事を誓います!」


彼女の目元に薄っすらと涙が浮かぶ。騎士道物語のワンシーンのようだ。やっぱりこの世界の人たちは、一挙手一投足がドラマチックすぎてたまらない。


「話がまとまったわね。旅はひとまず一週間。オーツで街道の様子を確かめて、無理がなければ学術都市カウガへ。毎晩、こちらへ連絡を入れるわ」


シェリルが地図の二か所に指を置いた。


「カイは、何を知りたい?」


「まずは、この世界の暮らし。それと、魔法が使えない僕にもできる事があるか。調べられるなら、自分の体の事も」


「ええ。では、それを一緒に確かめましょう。次はカイの身分だけど……」


シェリルが手元の小さな水晶端末を操作すると、僕の着ている服の周囲に淡い光の膜が重なった。


「これは『認識阻害の加護』よ。貴方特有の雰囲気を目立ちにくくするの。私の『新米助手』として歩くなら、その方がいいでしょう。もっとも、勘のいい人にまで必ず通じるとは限らないから、そこは覚えておいてね」


「おお、ステルス機能付きの変装魔法か! ファンタジーの定番だね、助かるよ……? ねぇシェリル。僕の雰囲気? は独特なの?」


独特な雰囲気? 気にした事もなかったがそうなのだろうか。


「ええ。何といえばいいのかしら……貴方の周辺のマナの反応が少し特殊なのよ。見ようによっては貴方を拒絶しているようにも感じられるわ」


ほう。マナさんに嫌われていると。いいでしょういいでしょう。気にしないよ。イツモアには好かれているし嫌われても気にしない。

「カイには言っていなかったけど、身体検査で得た情報や、イツから摘出した貴方の因子も現在調査中なの。判明したら伝えるわ」

そう言えば、イツモアは巫女長の職務以外で僕から離れる時、定期的にシェリルの検診と研究に参加していると言ってたっけ。


「カイ、一つだけ約束して。知らない事を試す時は、まず声を掛けてね。面白そうなものを見つけたら、私にも教えてちょうだい」


シェリルの少し真剣な眼差しに、僕はこくりと頷いた。


「わかってる。目立たず、騒がず、1人の旅人としてこの世界を観察してくるよ」


「……よろしい。では、出発の準備を。イツには移動手段の調達と整備を任せるわ」


「承知いたしました。カイ様を乗せる器……私の魂を込めて磨き上げておきますわ」


鼻息を荒くして部屋を飛び出していくイツモア。

見送るテトライルの、羨望と嫉妬が混ざり合った複雑な視線。

そして、全てを達観したような、どこか深い愛情を湛えたシェリルの微笑み。


……元の世界でどんな仕事をしていたかは思い出せないけど、この『異世界生活』、少々問題もあるが今のところ最高だな。……よし、思いっきり楽しんでやるぞ!


こうして、偽りの「上司」と、愛が重すぎる「巫女長」による、前代未聞の神殿脱出作戦が幕を開けた。


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