洗脳ループ
「おはよう、財人」
「おはよう朱里。今日の雨は酷かったな」
よし。
ウチの意識は大丈夫。
まだ正気を保ってる。
「財人ったら、雨の中を傘もささずに走っていましたのよ」
「いや、天気予報だと晴だったじゃん」
「まったく、わたくしが途中で合流しなければどうなっていた事か」
「え~。とうかっち、ゆるり達に内緒で財人と相合傘じゃん」
財人はいつも通り。
多分、ウチの洗脳が解けてる事は気づかれてない。
統香もゆるりも、普通。
正気の状態での洗脳は成功って事で良さそうね。
「ね~しゅりち」
「ど、どうしたのよ?」
「なんか怒った顔してない?」
「え?」
「どったの~?やっぱりとうかっちの抜け駆け、許せない感じ?」
「は、ハァ?!ばっかじゃないの!!」
ゆるりの奴、余計な事を。
これはどっち??
ウチの洗脳が解けてることに気づいてる?
ゆるりは黒幕側??
いやいや、単純にからかってるだけかも。
ゆるりはそう言った事するし。
洗脳状態のウチは、何故か知らないけどツンデレっぽい言動が多かった。
いや、普段はそうじゃない……そうじゃないわよね。
いや、それはどうでも良いわ。
むしろ好都合よ。
ツンデレしぐさが身についてるなら、いくらでもごまかす方法はある。
一番まずいのは黙ってる事。
だから、何か言わないと!!
「ゆるりちゃぁん。それはそうと、古典の課題はやったのかしらぁ?」
「びゃぇぇぇぇ!!な、なんだぁ、モモチかぁ」
ゆるりが変な悲鳴を上げる。
ねっとりとした手つきでモモがゆるりの頬をまさぐったのだ。
「ゆるりちゃん。いつも古典の宿題、やらないからぁ。心配だったのよぉ」
「ゆるりさんの場合は、それ以前の問題は気がしますけど」
「アハハ……まぁでも黒川さんも頑張ってるんだよ。アニメでもニートキャラっていざというときに覚醒するし」
委員長と実も合流したわね。
よかった、これでいったん話が流れたわ。
てか、実は何堂々と3段アイス食べてるのよ。
委員長も何で注意しないの?!
校則違反でしょ?!
これも洗脳のせい???
「それにしても、古典の授業って眠いよねぇ」
「みのりっちの場合は血糖値のせいじゃない?ドカ食い気絶みたいな」
「え、えぇ?!」
「こぉら。ゆるりちゃんは他人の心配より自分のお勉強よぉ」
モモがそう言ってゆるりを拘束する。
何気ない、洗脳された状況下でのいつもの状況。
だけどー
モモは一瞬、私を見てウィンクした。
たぶん、さっきゆるりにちょっかい出したのもわざと。
モモ……昨日の事、誰にも言って無いんだ。
もしかしたら……モモはこの状況下で私に味方になってくれるかもしれない。
よし、今日の放課後!!
モモと二人で話する。
そうすれば、何か手がかりが増えるかも!!
◇
「ふんふんふ~~ん」
放課後。
ウチは上機嫌で家に帰っていた。
「財人ったら、あんな趣味があったなんて」
今日はウチが入っている部活。
茶道部が活動する水曜日。
まさか財人が遊びに来るとは思わなかった。
しかも、めっちゃ抹茶が美味しいって。
「財人も見る目があるわねぇ」
あれ?
そう言えば、今日の放課後に何かしようとしてたんだけど。
何だったっけ?
『ウチは洗脳されている』
まぁいっか。
忘れるぐらいの事だし、重要でもないでしょ。
「ただいま~」
部屋に戻ったら、宿題しないと。
はぁめんどくさいなぁ。
「ん?何このポスター」
部屋に見覚えのないポスターが貼ってある。
『洗脳するほど恋してる』って、なんかこれー
「ッツ、アァァァァァ」
頭が……痛い。
何これ。
何これ!!
知らない記憶?
洗脳??
洗脳って……あ。
「思い……出した!!」
パッとスマホを確認する。
日付は変わってない。
「いつから?いつから洗脳されてた!!」
クソ。
ウチはまだ洗脳ループを抜け出せてはないって事?
結局モモとも話が出来てない。
記憶もあいまいで、どこから洗脳されてたかも分からない。
完璧に正気だと確信できるのは……朝のホームルームまで。
短いタイムリミットね。
「上等よ……まずはこのループを攻略してやるわ」




