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藪蛇

 「よし……流石に教室には誰も来てないわね」


 現在、朝の7時半。

 ウチは一番乗りで学校に来ることに決めた。


 職員室で教室の鍵を受け取り、ガチャリと開ける。


 この時間に学校に来るのは部活で朝練とかしてる連中。

 普通の生徒は来ない。

 

 もう賭けの領域だけど、朝イチに来てモモを待つしかない。

 正気を保てる時間が短い以上、これ以外に方法は無い。


 問題は……教室に来る順番。


 モモが六華の誰よりも早く教室にくれば問題ない。

 だけど……もし他の六華のメンツや財人が来たら、無理くりモモを引き出すのは不自然に見える。


 それに、こんなに早く学校に来るのも怪しい行動ではある。

 何度も使える手じゃない。


 大丈夫。

 昨日、運気を上げる方法を調べて実践してきたんだから。


 何とかなってくれるはず。


 「あらぁ?早いわねぇ朱里ちゃん」

 「モモ!!」


 しゃぁぁぁぁぁぁ!!!

 やったわ!!

 やりました!!

 

 最初に来たのがモモ!!

 何が良いって他の生徒もいない!!


 一番いいタイミング!!


 「朱里ちゃん?」

 「モモ……ごめん」

 

 よし、まずは一旦モモをここから連れ出す。 

 その為の口実は考えてきた。


 「ちょっと、体調悪くて……保健室まで連れて行ってくれない?」

 「それは……他の人には内緒にした方が良いかしら?」

 「えぇ……迷惑かけるわね」

 「良いのよぉ。朱里ちゃんにはお世話になってるんだからぁ」



 「だいぶ落ち着いたかも」

 「無理はして無さそうねぇ。でも、まだ余裕があるし、寝ておきなさぁい」


 保健室のベッドで寝る。

 下手に早起きしたのもあってもう寝そう。


 だけど、寝ちゃだめだ。

 モモに洗脳の事を聞かないと。


 幸い、保健室の先生は今居ない。

 この時間は、学校で先生たちが会議をしてるはず。


 切り出すなら、今しかない。

 でも……どうやって切り出せば。


 「朱里ちゃん、ここ最近ずっと朝しんどそうよねぇ」

 「そう見える?」

 「えぇ。多分低気圧ってやつじゃないかしら」


 なるほど、今のモモにはウチが低気圧で滅入ってるように見えるんだ。

 これは好都合。

 ならこのままー


 「午前体調が悪そうなときも、午後にはすっかり元気だからぁ。自覚が無いだけで特別朝が弱いのかもしれないわぁ」


 あれ?

 何か、違和感。


 「昨日は特に朝が辛そうだったけど、放課後にはすっかりいつも通りだったわねぇ」


 間違いない。

 今ので確信した。


 モモは……洗脳されている状態のウチを正常だと思ってる。

 その上、無意識的にウチが洗脳されているかどうかを見分けてる。


 「他の皆は気づいてなかったみたいだけどぉ。無理して隠し続けるのも良くないわぁ」

 「ち、違うし。弱み握られるのが嫌なだけで」

 「あらあら♪私には心を開いてくれたって事で良いのかしらぁん」

 「うっさい」


 モモは今、財人達にウチの事を伝えてない。

 多分それは、モモ自体洗脳されている事に気づいていないから。

 洗脳されていないウチをただの体調不良だと考えているから。


 もし、ウチが下手に洗脳の話をモモにしたら?

 なんなら、モモが実は黒幕側の人間だったら?


 ウチの勝ちの目は無くなる。

 モモが黒か白かははっきりしないけどー


 「もう大丈夫。ぼちぼち教室もどろ」

 「そうねぇ。せっかくなら手でもつなごうかしらぁ」

 

 洗脳状態を見破れる可能性がモモにある以上、下手な藪蛇はつつけない。

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