藪蛇
「よし……流石に教室には誰も来てないわね」
現在、朝の7時半。
ウチは一番乗りで学校に来ることに決めた。
職員室で教室の鍵を受け取り、ガチャリと開ける。
この時間に学校に来るのは部活で朝練とかしてる連中。
普通の生徒は来ない。
もう賭けの領域だけど、朝イチに来てモモを待つしかない。
正気を保てる時間が短い以上、これ以外に方法は無い。
問題は……教室に来る順番。
モモが六華の誰よりも早く教室にくれば問題ない。
だけど……もし他の六華のメンツや財人が来たら、無理くりモモを引き出すのは不自然に見える。
それに、こんなに早く学校に来るのも怪しい行動ではある。
何度も使える手じゃない。
大丈夫。
昨日、運気を上げる方法を調べて実践してきたんだから。
何とかなってくれるはず。
「あらぁ?早いわねぇ朱里ちゃん」
「モモ!!」
しゃぁぁぁぁぁぁ!!!
やったわ!!
やりました!!
最初に来たのがモモ!!
何が良いって他の生徒もいない!!
一番いいタイミング!!
「朱里ちゃん?」
「モモ……ごめん」
よし、まずは一旦モモをここから連れ出す。
その為の口実は考えてきた。
「ちょっと、体調悪くて……保健室まで連れて行ってくれない?」
「それは……他の人には内緒にした方が良いかしら?」
「えぇ……迷惑かけるわね」
「良いのよぉ。朱里ちゃんにはお世話になってるんだからぁ」
◇
「だいぶ落ち着いたかも」
「無理はして無さそうねぇ。でも、まだ余裕があるし、寝ておきなさぁい」
保健室のベッドで寝る。
下手に早起きしたのもあってもう寝そう。
だけど、寝ちゃだめだ。
モモに洗脳の事を聞かないと。
幸い、保健室の先生は今居ない。
この時間は、学校で先生たちが会議をしてるはず。
切り出すなら、今しかない。
でも……どうやって切り出せば。
「朱里ちゃん、ここ最近ずっと朝しんどそうよねぇ」
「そう見える?」
「えぇ。多分低気圧ってやつじゃないかしら」
なるほど、今のモモにはウチが低気圧で滅入ってるように見えるんだ。
これは好都合。
ならこのままー
「午前体調が悪そうなときも、午後にはすっかり元気だからぁ。自覚が無いだけで特別朝が弱いのかもしれないわぁ」
あれ?
何か、違和感。
「昨日は特に朝が辛そうだったけど、放課後にはすっかりいつも通りだったわねぇ」
間違いない。
今ので確信した。
モモは……洗脳されている状態のウチを正常だと思ってる。
その上、無意識的にウチが洗脳されているかどうかを見分けてる。
「他の皆は気づいてなかったみたいだけどぉ。無理して隠し続けるのも良くないわぁ」
「ち、違うし。弱み握られるのが嫌なだけで」
「あらあら♪私には心を開いてくれたって事で良いのかしらぁん」
「うっさい」
モモは今、財人達にウチの事を伝えてない。
多分それは、モモ自体洗脳されている事に気づいていないから。
洗脳されていないウチをただの体調不良だと考えているから。
もし、ウチが下手に洗脳の話をモモにしたら?
なんなら、モモが実は黒幕側の人間だったら?
ウチの勝ちの目は無くなる。
モモが黒か白かははっきりしないけどー
「もう大丈夫。ぼちぼち教室もどろ」
「そうねぇ。せっかくなら手でもつなごうかしらぁ」
洗脳状態を見破れる可能性がモモにある以上、下手な藪蛇はつつけない。




