議論ー盤外ー
「確かに、ドッキリにしては少々迫真過ぎでしたわね」
「洗脳モノでは性格が豹変するとかあるあるだしね」
「実は何の話をしていますの?!こんな時に?!」
「いやぁ、薄い本とかで見た事ある展開だなと思って」
なるほどねぇ。
しゅりちの切り札はこれだったわけだ。
れっかちの洗脳を解除する様子を皆に見せる。
それで、一気に六華全員を味方に引き入れるって算段だ。
「でも、だからこそ信憑性はあると思う」
「そうですわね。まだ全てを飲み込んだわけでは無いですけども、朱里の話を聞く価値はあると思いますわ」
教室の雰囲気は今、しゅりちの方へ流れてる。
まぁ、目の前で豹変するれっかちを見せられてるから当然かもね。
でもさぁ、全部無駄なんだよね。
だってゆるりにはそれこそ、洗脳って言うチート級切り札があるんだから。
『イヤ、イヤ、カストルム、フタグン。イヤ、イヤ、ミ=ゴ。ミ=ゴ・カストルム、フタグン』
この呪文は聞かせるだけで良い。
ゆるりが話さなくても、魔力を使わなくてもいい。
まぁ、流石にしゅりちも対策はしてるだろうね。
でも、その対策を共有できたのはざいとっちだけ。
れっかちはさっき洗脳が解けた所だからね。
しゅりちの作戦を聞く時間は無いはずだよ。
だから用意したんだ。
スマホと、お父さんから貰って来た小さい録音機材が二つ。
そこに、呪文を録音してる。
ゆるり自身が呪文を唱えて。
それと同じタイミングでスマホや機材を投げる。
そうすれば、ざいとっちとしゅりちじゃ対応できない。
仮にれっかちが動いたとしても、後手の対応なら洗脳効く方が先でしょ。
「それじゃぁ朱里さん。皆さんにどこから話しますか?」
「まずは洗脳ループの話からよ。これが実質的な制限時間になるから」
皆がしゅりちに顔を向ける。
このタイミングだ。
このタイミングにしよう。
ねぇしゅりち。
確かに色々考えて行動してるみたいだけど、それは余りに洗脳耐性を持たない人を巻き込みすぎだよ。
そんなやり方じゃ勝てないよ?
だって、しゅりち以外の人間を全員洗脳してやれば……しゅりちの頑張りはぜ~んぶ水の泡なんだから。
教えてあげないと。
所詮、洗脳耐性を持たない人間はゆるり達と違うんだって。
仲間にするだけ無駄なんだって。
そうやって徹底的に心を折って。
今度こそしゅりちをこっち側に誘い込む。
「イヤ、イヤ、カストルムー」
「あらぁ、駄目よゆるりちゃん」
え?
なんで、モモちがゆるりの口を塞いで?
いや、両手の機材をばら撒けばまだー
「両手を機材をばら撒けば皆を洗脳出来るなんて、怖い事考えるのねぇ」
な、なんで?
何でモモちにバレてるの??
「朱里ちゃん。これがゆるりちゃんの切り札みたいよ」
ポケットに入れた機材まで取られた?
というか、しゅりちに全部渡して……このタイミングの良さは。
「そうね。そのまさかよぉ」
「ッ」
「私もね、朱里ちゃんに洗脳から解放されていたの」
ずっと洗脳されたふりで潜んでいたの??
いや、洗脳ループがある限りそれはありえない。
なら……モモちの洗脳が解けたのは昨日の放課後。
『淡野モモは、僕の計画に支障をきたす存在だった』
今更になって、黒幕ちゃんの言葉を思い出す。
だって普通に考えたらゆるりのポケットに入れてた録音機材までバレてるのはおかしい。
もしかして、モモちも黒幕ちゃんと同じ特別な力を持ったー
「そうねぇ、ゆるりちゃん。私、いわゆる超能力者なの」
◇
『問題が一つ、ウチじゃゆるりに勝てない』
昨日の作戦会議中、唯一朱里ちゃんが吐いた弱音だった。
黒幕を追い詰めると。
あのおぞましい認識阻害を乗り越えたと語る朱里ちゃんが上げた作戦の欠点。
『でも、黒川の洗脳も赤山なら効かないんだろ?』
『問題はウチじゃなくて皆の方ね……ゆるりは黒幕とは違って性格があれだから。黒幕が諦めてもあいつは諦めないと思う』
瞬間、朱里ちゃんの心に浮かび上がっていたのは……少し前の記憶。
烈火ちゃんと二人でゆるりちゃんと戦って、逃げてきた時の光景と後悔。
『黒幕の正体を晒すと同時に、ゆるりを拘束する必要がある。でも、ウチじゃゆるりの洗脳から皆を守るのは難しい』
『でも、それならゆるりと一緒に居たミ=ゴって化け物とか、黒幕の使う洗脳の対策を考えなきゃいけないんじゃね?』
『それは大丈夫。あいつは……出来ればそんな洗脳したくないって考えてるはずよ』
私達と朱里ちゃんの違いは黒幕の正体を知っているか否か。
認識阻害の影響で黒幕関連の情報は朱里ちゃんの心から読み取れないけれど。
一つだけ確かなのは、朱里ちゃんは黒幕の人柄をある意味信頼している。
朱里ちゃんの言葉で説き伏せて、心を折って、最終的には更生させられるって信じてる。
でも、ゆるりちゃんは違うのね。
あの子は確かに、正論を言って諦めてくれるタイプじゃないわ。
『じゃぁ、私がゆるりちゃんを抑えるわ』
『モモ』
『せっかく人の心が読める力があるんだもの。有効活用しないと損、そうでしょ?』
それに、私では届かなかった黒幕を朱里ちゃんが止めてくれるんだから。
朱里ちゃんの代わりにゆるりちゃんを止めるのが筋ってものよね。
◇
「そうねぇ、ゆるりちゃん。私、いわゆる超能力者なの」
困惑しているゆるりちゃんの口を押える。
音を聞くだけで洗脳されるなんて、恐ろしいもの。
後はそうね。
他の子達に私の能力を信用してもらおうかしら?
「ちょ、心が読めるってあり得るんですの?」
「ちょ、心が読めるってあり得るんですの?」
統香ちゃんの言葉を一言一句合わせる。
「えぇっと。どんどん現実離れした力が……えぇ、これ現実??」
「えぇっと。どんどん現実離れした力が……えぇ、これ現実??」
実ちゃんの言葉を一言一句合わせる。
二人がぎょっとした目で私を見る。
これだから能力を明かすのはあまり好きじゃないのよね。
でも、この学園を元に戻すにはこれしかないもの。
「証明は、これで十分かしら?」
でも朱里ちゃん。
私が大きく手助けできるのはきっとここまでよ。
ゆるりちゃんを抑えた今、残す相手は黒幕。
その黒幕に勝てるのは、朱里ちゃんしか居ないんだから。




