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イノチガケ

 「託されたって……何の話ですか?」

 「そうね、順を追って話すわ」


 委員長の目を見る。

 ここからは、いったん周囲の事は忘れて委員長と向き合う。


 ゆるりの事は気になるけど……モモと財人にそこは任せるわ。


 「さっきも言った通り。ウチは一人洗脳から逃れたわ……そして一人で洗脳と戦ってきた」

 「えぇ、しゅりちその設定まだ続けるの?」

 「良いじゃないゆるりちゃん。朱里ちゃんに最後まで喋らせてあげましょうよ」


 ちゃちゃを入れるゆるりにモモが寄り添う。


 「せっかく朱里ちゃんがドッキリの為に考えた台本よぉ。いじるなら全部聞いてからにしないと、ね」

 「う~ん。それもそっか」


 ほんと。

 モモには助けて貰ってばかりね。

 もう一つ、大きな仕事があるって言うのに。


 ウチは……ウチに出来る事をしよう。

 そう決めて、この教室に戻ってきたんだから。


 「でも、一人じゃ無理だった。洗脳の原因とか、誰が黒幕とか全然分からなくて……だから最初に、委員長を仲間に引き入れた」


 「でも朱里さん。私にはそんな記憶はありませんよ」


 そう言いつつも、委員長は頭を抱えている。

 大丈夫。 

 前と同じようにすればいい。


 「それは委員長が洗脳でその事を忘れているから……信じられないと思うけど、そう言うしかない」

 「それじゃぁ」

 「でも、ウチは委員長しか知らない事を知ってる」


 委員長の目が鋭く輝いた。

 もう委員長だって分かってるはずよ。

 ウチの言葉が、ドッキリの台本の為の言葉じゃないことぐらいはね。


 「朱里さん、貴方の言う事が本当だというなら」


 あとはどれだけ委員長の心を揺さぶれるか。


 「私を……烈火を納得させてください」

 

 委員長にかかった何度目かの洗脳を、どうやって解くか。

 その答えは既に、ウチの頭の中にある。


 「それじゃぁ……告発するわ。委員長こと比奈野烈火はー」


 ただ、一つ謝らないと。

 ごめんね委員長。

 みんなの前で、秘密をばらさなくちゃいけない。


 「財人のストーカーよ」

 

 罰ならあとで受けるわ。

 だから今は、正気の委員長に戻って!!


 「え???比奈野が、俺の???」

 「い、イヤイヤ朱里ちゃん。それは嘘よ。いや……え、嘘よねぇ」


 なんでアンタらがびっくりしてるのよ!!

 財人とモモにはあらかじめ伝えてたでしょうが!!


 「……」


 対する委員長は汗だらだらでこっち見てるわね。

 でも、まだ洗脳が解けた感じは無い。


 「このお守りは委員長の私物なんだけど、中には財人の髪の毛が入ってるわ」

 

 前はこれで洗脳が解けたんだけど。

 委員長は未だにその予兆を見せない。


 「な、なにを言っているのか……烈火には……分かりません」

 「本当にそう?」


 「えぇ……確かに、烈火は財人君の事が好きです。好きです。大好きです……で、でもストーカーだなんて。財人君の家に盗聴器を仕掛けたり、財人君の告白を歯ぎしりしながら見守ったりなんてしてないです」


 「いや、赤山はそこまで言って無かったろ」


 明らかに前の洗脳と症状が違う。

 黒幕に警戒されたのか、明らかに前より強い洗脳が掛かってる。


 「そ、それが朱里さんの主張ですか。それだけですか??烈火は、烈火はまだ納得いってません」


 なら、もっと直接的に。

 委員長の心の奥に眠る、嫉妬を呼び起こせば。


 「ごめん。財人」

 「え?」

 

 ぐっと。

 財人の顔を掴んだ。


 あぁ。

 振りをするだけでもこんなにハズイのね。


 「ちょ、お前何して」

 「何ってほら……委員長の説得に失敗したから腹いせに」


 腹いせにキスをするだなんて、バカみたいな行動だ。

 第一、ウチってそう言うキャラじゃないし。

 さっきまでの話の文脈ぶった切ってるし。


 「え……朱里さんが……財人君と?」


 でも、委員長の嫉妬を呼び起こすにはこれが一番よ。

 だから。


 「ちょ、財人。ジッとしなさいよ」


 バンと財人を壁際に押し込んだ。

 その瞬間の事。

 

 「そんなの、駄目に決まってるじゃないですか」


 机を蹴飛ばして走る音が聞こえる。

 数秒後、ウチの耳元で壁が抉れる音がした。


 「烈火だって……烈火だって分かってるんです。朱里さんはそんなことしないって。きっと烈火の洗脳と解くために演技してるんだって」


 バチバチと耳元でスタンガンが火花を散らす。

 髪を乱れさせて突撃する委員長。

 嫉妬に満ちた危ないその目が示すのは。


 「でも、こんなやり方酷いですよ」

 「ウチだって、委員長が犠牲になったあの時かなり凹んだんだから。お互い様よ」

 「烈火は朱里さん程酷い事してませんよ」

 「残された側の気持ちも考えてほしいって話」


 委員長が洗脳から解けたサインだった。

 

 「ありがとうございます朱里さん。財人君を助けてって約束、守ってくれて」

 「こっちこそ。アンタのデータが無かったらここまで来れなかったよ」


 ゆっくりと委員長がスタンガンをしまう。

 ウチからお守りをひったくり、二人そろって皆の方を見た。


 まぁ、当然と言えば当然なんだけど。

 皆絶句してるわね。

 

 信じられないものを見る目で委員長の事を見てる。


 「皆さん、ごめんなさい。驚かしてしまいました」 

 「いや……うん。だいぶびっくりいたしましたわね」


 統香がおっかなびっくり声を上げる。

 そしてその言葉に乗っかるようにー


 「でも、これって証明になったんじゃないかしら?」


 モモがその言葉を上げてくれた。


 「この烈火ちゃんの姿を見て……流石にドッキリだとは思えないわぁ私」

 「そう思ってくれないと困ります。烈火は本当に全部ばらされましたから」


 委員長はそう言うと一歩前に出る。

 そして、一言。


 「私も証人です。この学園は、不快な洗脳に侵されています」


 それはまさしく鶴の一声って感じだった。

 教室の雰囲気が、一気にこっちへ傾いた。

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