議論開始
「洗脳されてるって」
「ハハ、面白くない冗談ですよ財人君」
委員長と統香はそれだけ言って絶句する。
信じられないものを見るような目で財人を見ていた。
委員長に関しては……頭を抱えてる。
「あ、あれだよね!!衝撃的な事を言って皆に注目してもらうみたいな感じ」
実に至っては思わずアイスを食べる用のスプーンを落とす始末。
落ち着くためなのか、カップのアイスを飲み物の様に飲み。
パクパクを口を開く。
「ほら、推理小説で最初に死体を転がしたりとか、異世界系アニメで主人公がトラックに引かれたりとか。そう言う技法で話してくれてるんだよ」
多分、財人を庇おうとしたいんでしょうね。
焦りすぎて何を言っているのか分からなくなってるけど。
想像以上に皆混乱してる。
けど、想定の範囲内よ。
後はー
「ねぇ財人くん。私には、貴方が嘘を言っていないように見えるわぁ」
負担かけて悪いわねモモ。
教室の雰囲気のサポート、任せたわよ。
「でも、余りにも荒唐無稽すぎて信じられないのよねぇ。だ・か・らー」
「証拠見せてくれないとさ~。ゆるり達も信じられないって話」
ゆるりが被せてきた。
ニマニマと笑って、観客気分ね。
今に見てなさい。
アンタの余裕の面も剥がしてやるわ。
「証拠は難しい……でも、証人は居る」
「証人ですの?」
「あぁ……その人が俺にかかってた洗脳を解いてくれたからな」
財人が目くばせする。
「それって?」
「ウチだよ」
ありがとね。
ここまで場を調えてくれたら、後はウチの番だ。
「財人の言う通り。この学園は、黒幕によって洗脳されてるの」
表向き、この教室で洗脳の事実を受け入れてるのはウチと財人だけ。
7人中2人。
モモにはまだ役割があるから、今は表立ってウチ達の助け舟は出せない。
この状況でウチがやることは、他のメンバーをこちら側に引き寄せる事だ。
「一つ、聞かせてください」
委員長が前に出る。
「財人君はさっき『その人が俺にかかってた洗脳を解いてくれた』と言いました。だとすると」
「委員長の考えている通りよ……ウチが財人の洗脳を解いた」
「仮に、仮にその話が本当だったとして、朱里さんはどうやってご自身の洗脳を解いたんですか?」
「強く頭を打ったのよ……そこで違和感を感じて、日記を残しながら洗脳と戦ってきた」
そうしてウチはカバンから日記を取り出した。
何度も何度も洗脳されてはやり直した、あの頃の記録であり、証拠の一つを。
「この日付け……半年前ぐらいからだよ」
「朱里はずっと、その洗脳とやらと戦っていたと言いますの?」
実と統香も食いついた。
まずは大丈夫。
このまま日記を読んでもらう。
あのページまで読んでもらうのが第一作戦。
「ねぇねぇしゅりち……ゆるりにも見せてよ」
「な?!」
すっと。
いつもの動作でゆるりは日記を取り上げた。
「へぇ……凄いねぇ。こんなもの作ってたんだ」
「ね、ねぇ黒川さん。こ、これって本当なのかな?僕らの世界が誰かに侵略されてるぞ!!みたいな?」
「みのりっちは単純だね。こんな日記、証拠にはならないでしょ?」
そう簡単には行かせてくれないって顔ね。
良いわよ。
そっちがその気なら、徹底的にやってやろうじゃない。
「ウチの日記が証拠にならないって……なんで言い切れるのよ」
「だってさぁ。こんなのどうとでも、出来るよね。財人っちと口裏合わせて、それっぽい日記作れば良いだけじゃん」
「そんな事、何の為にするのよ」
「そりゃぁドッキリでしょ?」
ゆるりはあっけらかんと言い切った。
まるで当たり前の事を言うかのように。
「あ、そう言えば赤山さん。前にドッキリしてたよね」
「え?」
「そうですわね。前に財人さんと他のクラスメイトの方と一緒に」
「朱里さんはああ見えて優しい人ですから、頼まれるとしょうがなくって感じでしたね」
「でしょ~。しゅりちってあぁ見えてやるとなったら気合入れるからね」
な、なによその情報??
後出しジャンケンみたいな感じで情報増やして。
これもゆるりの洗脳。
「あぁ、朱里ちゃんが覚えてないのも無理ないんじゃないかしら?」
「モモ」
「最近、ドッキリ好きのグループとはあまり会っていないものね……それに朱里ちゃん今は低血圧で朝しんどそうだったじゃない?」
モモのこの発言。
昔はドッキリ好きのグループと出会っていた?
最近は出会って無くて、ウチが低血圧でそれどころじゃなかった。
低血圧。
低血圧。
あぁ。
これってモモの暗号だ。
低血圧でしんどそうは、ウチの洗脳が解けている状態を意味してるんだ。
だとすると……これは。
ウチがまだ完全に洗脳の餌食に会っていた頃。
財人が大好きになっていて、ツンデレキャラみたいな言動をしていた頃。
ウチはドッキリをしてたんだ。
洗脳が濃すぎた時の記憶は、確かに曖昧よ。
ウチが他の奴らとどんなドッキリをしてたかなんて知らない。
でも、みんなのこの反応。
なにより、ゆるりがこのタイミングでこの話題を切ってきた意味。
ゆるりは……ウチの告白をドッキリにするつもりなんだ。
ウチの記憶が曖昧な、洗脳されてた頃の想い出を使って。
「ねぇしゅりち。洗脳がドッキリじゃないって言うなら、証拠出してよ」
「この日記も証拠として出したつもりなんだけど?」
「もっと本格的な奴だよ。ここにいる皆がその証拠をみて、これはマジだって思うやつをさ」
悔しいけど、今教室の雰囲気はゆるりに傾いてる。
なら……少し早いけど、これを使うしかない。
「分かったわ。出してやるわよ、決定的な証拠」
「へぇ……意外と自信ありじゃん」
ウチはカバンから二つ目の証拠を取り出す。
「それが……証拠ですの?」
「お、お守り??しゅりち、本気???」
傍から見れば、ただのお守りよね。
でも、ある人物にとっては違うはずよ。
「な、なんで朱里さんがそれを……烈火のお守りを持っているんですか?」
「アンタから託されたからよ、委員長」
二つ目の証拠は、委員長その人。
比奈野烈火の洗脳解除をもってして、この学園に洗脳という異能が存在することを証明する。




